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『日本の画家』

アーサー・モリソン / Arthur Morrison

アーサー・モリソンによる『日本の画家』は、1911年にロンドンのT・C・アンド・E・C・ジャック社から出版された、日本の絵画史に関する記念碑的な二巻組の著作です。この作品は、西洋における日本美術研究の黎明期において、包括的なガイドブックとして大きな役割を果たしました。

作品の姿と内容

本書はフォリオ判(大型)の二巻組で構成されており、各巻は堅牢なハードカバーで装丁されています。一部の限定版は黒色の布装に背表紙と前面の角に金箔が施され、また別の版では現代的な赤色の布装に金色のタイトルが背表紙に輝くものも存在します。各巻には上質な紙が用いられ、第一巻は154ページに57枚の図版、第二巻は128ページに65枚の図版が収録されています。これらの図版の多くは白黒ですが、色彩豊かなカラー図版も数多く含まれており、それぞれの図版には詳細な説明が記された保護紙が添えられています。掲載された絵画の多くは、モリソン自身のコレクションからのものでした。本書の内容は、日本の画家、そして明治時代以前(1868年以前)の日本の絵画を主題とし、その歴史的変遷と個々の画家の業績を網羅的に紹介しています。

背景・経緯・意図

著者アーサー・モリソン(1863-1945)は、イギリスの小説家でありジャーナリスト、そして熱心な日本美術の収集家として知られています。彼は日本に滞在した経験はないものの、個人的な人脈を駆使して特に浮世絵の分野で優れたコレクションを築き上げました。モリソンは、19世紀後半に西洋で高まったジャポニスムの潮流の中で、日本美術への関心を深め、大英博物館に収蔵されたウィリアム・アンダーソン・コレクションを熱心に研究していました。この時代、西洋において日本美術に関する包括的かつ詳細な研究書はまだ少なく、モリソンは自身の豊富なコレクションと研究に基づき、日本の絵画史を体系的に紹介することを意図しました。彼の著書『日本の画家』は、当時まだ十分に理解されていなかった日本の絵画の多様性と奥深さを、西洋の読者に伝えるための画期的な試みでした。モリソンのコレクションの多くは、後に大英博物館に収蔵されることになります。

技法や素材

本書の制作にあたっては、当時の最先端の印刷技術が用いられました。本文は活版印刷で、絵画の図版は黒白写真製版やコロタイプ印刷、そして色鮮やかなカラー図版には多色刷りの石版印刷などが採用されたと考えられます。これらの印刷技術により、当時の技術水準において可能な限り忠実に日本の絵画作品が再現されました。装丁には、堅牢な布(黒色または赤色)が使用され、背表紙や表紙のタイトルには金箔押しが施されています。これにより、書物としての耐久性と共に、美術書にふさわしい風格が与えられています。また、本文用紙や図版用紙には上質なものが選ばれ、特に図版には作品の保護と説明を兼ねた薄い保護紙が挟み込まれる工夫が凝らされています。

意味

『日本の画家』は、西洋における日本美術研究の草分け的な業績であり、美術史において極めて重要な意味を持ちます。この作品は、日本の絵画、特に明治時代以前の作品に対する西洋世界の理解と評価を大きく促進しました。体系的な構成と豊富な図版を通じて、それまで断片的にしか知られていなかった日本の画家たちの系譜や画風、そして各時代の美術的特徴が詳細に紹介されました。モリソンのコレクション、特に初期浮世絵の優品を多く含むその内容は、大英博物館における日本美術の受容と研究の初期の歴史を辿る上で不可欠な資料となっています。本書は単なる画集ではなく、当時の西洋人がいかに日本美術を捉えようとしたかを示す、文化交流の一側面をも映し出す貴重な記録とも言えます。

評価や影響

『日本の画家』は、出版当時から日本の絵画に関する主要な研究書として高く評価されました。その包括的な内容と詳細な記述は、西洋の美術史家、コレクター、そして一般の愛好家たちに多大な影響を与えました。モリソンが築き上げた日本美術コレクションは、本書の刊行後もその価値が認められ、大英博物館の日本美術部門の礎を築く上で決定的な役割を果たしました。この著作は、ウィリアム・アンダーソンやマーカス・ボーン・ヒューイッシュといった先駆者たちの研究と共に、英語圏における日本美術の知識普及に貢献し、後続の学者や研究者たちにとっての重要な参照点となりました。現代においては、その記述の一部に時代的な制約が見られるものの、本書は西洋における日本美術研究史を語る上で欠かせない歴史的資料として、今なおその価値を保ち続けています。