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タイル:リーチ製陶所 Square Tile: Nobori-gama

バーナード・リーチ Bernard LEACH

バーナード・リーチの「タイル:リーチ製陶所(Square Tile: Nobori-gama)」は、日本の伝統的な陶芸技法である登り窯(のぼりがま)にその名を冠した、素朴でありながら深い美意識を感じさせる陶器のタイルです。制作年は不詳ですが、バーナード・リーチが自らの美学と日本の手仕事の精神を融合させたリーチ製陶所(St Ives Pottery)で生み出された、実用性と芸術性を兼ね備えた作品の一つと位置づけられます。

作品の姿と内容

このタイルは高さ9.4センチメートル、幅9.4センチメートルの正方形で、手のひらに収まるほどの小ぶりなサイズです。素材は堅牢な陶器(ストーンウェア)で、その表面には素朴な土の質感が感じられます。特定の具象的なモチーフが描かれているわけではなく、むしろ土や釉薬(ゆうやく)、そして炎が生み出す偶然の表情が作品の中心をなしています。全体的に落ち着いたアースカラー、例えば、くすんだ茶色や灰がかった緑色、または自然な土色が基調となっていると推測されます。釉薬は厚ぼったくなく、薄くかけられているか、あるいは自然灰釉(しぜんかいゆう)のように素地の風合いを活かしたものが用いられていると考えられます。表面には、窯の中で炎が駆け巡ることで生じる微細な色の濃淡や、わずかな焼き締めによる表情の変化が見て取れるかもしれません。手仕事による温かみのある成形を感じさせる、わずかな歪みや不均一な表情が、この作品に独自の存在感を与えているでしょう。

背景・経緯・意図

バーナード・リーチは20世紀を代表する陶芸家であり、日本の民藝(みんげい)運動の重要な担い手の一人です。彼は1909年に日本に渡り、柳宗悦(やなぎそうえつ)や富本憲吉(とみもとけんきち)、濱田庄司(はまだしょうじ)といった思想家や陶芸家たちと深く交流しました。この経験を通じて、リーチは日本の伝統的な手仕事の美しさ、特に「用の美」という概念に深く感銘を受けます。それは、日常の中で使う道具にこそ宿る、飾り気のない健康的な美しさという思想です。1920年に濱田庄司とともにイギリスへ帰国したリーチは、コーンウォール地方のセント・アイヴスにリーチ製陶所(St Ives Pottery)を設立します。この製陶所は、東洋と西洋の陶芸技術と美学を融合させ、実用的でありながら芸術性の高い陶器を制作することを目指しました。本作品のタイトルにある「登り窯(のぼりがま)」は、日本の伝統的な陶器焼成方法であり、その窯で焼かれることで生まれる自然な風合いや窯変(ようへん)に、リーチは民藝が追求する「自然の美」を見出したと考えられます。このタイルは、彼が日本で得た知識と経験をイギリスの地で具現化しようとした意図の表れであり、手仕事の価値と自然の力を尊ぶリーチの思想が込められています。

技法や素材

このタイルは陶器(ストーンウェア)で制作されています。リーチ製陶所では、地元の土を精製し、手轆轤(てろくろ)や型打ち(かたうち)といった伝統的な成形技法を用いて作品が作られました。タイルであることから、型を用いて正確な形を成形した後に、手作業で表面に細かな調整を加えたと推測されます。焼成には、日本の登り窯(のぼりがま)に着想を得た、あるいはそれを模した窯が用いられたと考えられます。登り窯は複数の房が斜面に連なる構造で、炎が各房を順に上昇していく過程で、薪の灰が作品に降りかかって自然釉(しぜんゆう)となったり、酸素量の変化によって陶器の肌に多様な表情(窯変)を生み出したりします。このタイルも、こうした窯の特性を活かし、意図的にコントロールしすぎない、自然な焼き色や質感の変化を追求した作品であると見られます。釉薬についても、土の表情を消さない、薄く透明感のある灰釉や鉄釉が用いられた可能性が高いです。

意味

「タイル:リーチ製陶所(Square Tile: Nobori-gama)」は、単なる建築材としてのタイルの枠を超え、バーナード・リーチの美意識と日本の民藝思想が象徴的に表現されています。タイトルにある「登り窯(のぼりがま)」という言葉は、効率性よりも自然の摂理と職人の技が融合する日本の伝統的な陶芸文化を指し示しています。これは、リーチが提唱した「芸術と生活の融合」という主題に深く関連しており、特別な芸術品として鑑賞されるだけでなく、日常生活の中で使われ、触れられることでその価値を発揮する「用の美」を追求したものです。タイルの簡素な姿は、豪華絢爛さではなく、素材そのものの魅力や手仕事の温かさ、そして自然の力がもたらす偶発的な美しさを尊ぶリーチの哲学を体現していると言えるでしょう。この作品は、美が日常生活に根ざし、特別な場所ではなく身近な道具の中に宿るという、民藝運動の重要なメッセージを私たちに伝えています。

評価や影響

バーナード・リーチの作品、そしてリーチ製陶所から生み出された陶器は、発表当時からその実用性と芸術性の高さで広く評価されました。彼は20世紀の陶芸界において、東洋と西洋の美学と技術を結びつけ、その後の陶芸家たちに計り知れない影響を与えました。特に、彼の提唱した「用の美」の思想は、日本の民藝運動を国際的に知らしめるとともに、世界中のクラフト運動やデザイン思想に大きな影響を与え続けました。この「タイル:リーチ製陶所(Square Tile: Nobori-gama)」のような作品は、リーチの幅広い作品群の中では小品かもしれませんが、彼の思想と技術が凝縮されたものとして、その価値が認められています。現代においても、バーナード・リーチの作品は、大量生産・大量消費の時代における手仕事の価値や、自然素材への回帰、持続可能なものづくりへの関心が高まる中で、改めてその重要性が見直されています。このタイルもまた、機能美と静謐な美しさを兼ね備えた作品として、美術史におけるリーチの功績を示す貴重な一例と言えるでしょう。