アンリ・ランベール (Henri LAMBERT)
この作品は、1873年から1875年にかけて制作された、アンリ・ランベールによる皿「ランベール=ルソー」セットの一部です。本作品は、モネ没後100年を記念する「クロード・モネ ―風景への問いかけ」展にて展示されており、クロード・モネと同時代の芸術、特にジャポニスムの影響を示す例として紹介されています。
皿「ランベール=ルソー」セットは、磁器画家アンリ・ランベールと、陶芸家でありパリの磁器商であったウジェーヌ・ルソーの共同作業によって生まれました。作品名はこの二人、すなわちランベールとルソーの名を冠しています。 この制作は、1873年、パリの宝石商フレデリック・ブシュロンからの依頼であった可能性が指摘されています。
当時のヨーロッパでは、1854年の日本の開港を機に、日本の視覚文化への強い関心と影響が「ジャポニスム」として広がっていました。日本の浮世絵、陶磁器、染織物などが1860年代にはヨーロッパ市場に流入し、西洋の芸術家たちに新しい造形語彙、空間表現、色彩感覚、そして自然への新たな視点をもたらしました。 ウジェーヌ・ルソーは、自身の作品に日本の芸術を取り入れた最初のガラス芸術家の一人であり、日本の版画から着想を得るというアイデアは彼によるものです。 アンリ・ランベールは、この皿のデザインを考案しました。
先行する作品として、フェリックス・ブラクモンが1866年に手がけた「ルソー・サービス」があり、これはフランスの装飾美術において日本の版画の図像を最初に使用した作品とされています。 「ランベール=ルソー」セットは、その装飾コンセプトにおいて、以前のセットとは異なる特徴を持っています。動物のモチーフが単独で描かれるのではなく、自然の風景の中に配置され、多くの皿には風景が描かれました。
本作品は、1873年から1875年にかけて制作されたファイアンス焼の皿であり、印刷と彩色による下絵付けが施されています。 サイズは高さ2.0cm、直径25.8cmです。
ファイアンス焼とは、繊細な淡黄色の素地に錫釉(すずゆう)をかけた陶磁器の総称です。 酸化スズを添加することで、絵付けに適した白い釉薬が考案され、これは9世紀以前にイランまたは中東のどこかで生まれた技術とされています。 この白い釉薬の表面に、モチーフが印刷され、その後彩色が施されてから、さらに釉薬をかけて焼き上げる「下絵付け」の技法が用いられています。
この皿の装飾は、ジャポニスムの影響を色濃く反映しています。皿の表面にはエビを捕らえたような魚の頭部が描かれており、魚の胴体は皿の裏側にまで続いています。 このような、一枚の皿の表裏にわたって絵柄が展開する趣向や、自然の動植物を瑞々しく描く表現は、当時流行していた日本美術からの直接的な着想によるものです。 浮世絵の巨匠である葛飾北斎や歌川広重の版画に見られる動物や植物のモチーフが、この作品の装飾の基盤となっています。
皿「ランベール=ルソー」セットは、西洋陶磁器におけるジャポニスムの最も優れた例の一つとして評価されています。 このサービスの一部は、パリのオルセー美術館に所蔵されています。
制作後も、この作品は様々な重要な展覧会で紹介されてきました。例えば、2008年に東京の国立西洋美術館とパリのオルセー美術館で開催された「フランスが日本を見る:19世紀後半フランス装飾芸術における日本画家の影響」展、また2016年から2017年にかけてヘルシンキ、オスロ、コペンハーゲンで開催された「北欧のジャポマニア 1875-1918」展など、ジャポニスムをテーマとする主要な展覧会で展示されてきました。
現在、本作品は「モネ没後100年 クロード・モネ ―風景への問いかけ」展で展示されており、モネが生きた時代の芸術、特にジャポニスムが同時代の芸術家たちに与えた影響を示す貴重な作品として、その意義が再認識されています。