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コールド・ダーク・マター

コーネリア・パーカー

コーネリア・パーカーの作品《コールド・ダーク・マター》は、日常的なオブジェが劇的な変容を遂げ、科学的、哲学的、そして社会的なテーマを内包するインスタレーションアートです。1991年に制作されたこの作品は、テート美術館の「YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」展で紹介されています。

制作背景と経緯、意図

コーネリア・パーカーは、素材の物理的および比喩的な限界を試すような、芸術的なプロセスと物質の変容に長年魅了されてきました。彼女は以前から「小屋を爆破したい」という願望を抱いており、爆発を社会に遍在する「典型的なイメージ」と捉えていました。コミックやアクション映画、超新星爆発やビッグバンに関するドキュメンタリー、そして戦争の報道など、爆発のイメージは私たちの生活に深く根差しています。パーカーは、一瞬で起こる出来事に、持続的な側面を与えることに興味を持っていました。また、本作は彼女が「漫画のような死」と呼ぶ一連の作品の一部であり、物体を平坦化したり、蒸気ローラーで押し潰したりするなど、極端な変容を伴う試みの一つでもあります。

特に、小屋はイギリスの家庭生活における「反記念碑」とされ、捨てることのできないものや、男性がDIYを楽しむ場所として、多くのものや思い出が蓄積される空間です。パーカーは、この象徴的な場所を文字通り引き裂くことを意図しました。制作にあたり、彼女は1991年にイギリス陸軍に助言を求め、陸軍弾薬学校に招かれ、さまざまな爆発物の可能性を実演されました。最終的に、彼女はパイロテクニクスや特殊効果を伴わない「典型的な爆発」をもたらすプラスチック爆薬を選択しました。

技法と素材

作品は、イギリス陸軍の協力を得て爆破された庭の小屋と、その中にあったさまざまな日用品で構成されています。爆破された小屋は、複数の古い小屋の木材を組み合わせて作られた、窓のある約2.44m×3.66mの大きさのものです。内部には、工具、子どものおもちゃ、古い雑誌、さらにはマルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』のコピーなど、パーカー自身の持ち物も含まれていました。

爆破後、黒焦げになり、ねじ曲がった破片はすべて回収され、透明なワイヤーで天井から吊り下げられています。これにより、物体が爆発の瞬間に宙に浮いているかのような、あるいは空間に静止しているかのような錯覚が生み出されます。インスタレーションの中央には200ワットの電球が一つ吊るされ、その光が破片を照らし出し、ギャラリーの壁に劇的な影を落とします。この影は、浮遊する物体と同様に作品の重要な一部であり、現実と非物質が混ざり合い、ギャラリー空間全体を彫刻的な環境に変えています。

作品の意味

作品のタイトルである「コールド・ダーク・マター(冷たい暗黒物質)」は、宇宙に存在する、見ることができず定量化できない既知の物質を指す科学用語に由来しています。パーカーの作品は、科学、宇宙、そして日常の間に繋がりをもたらし、家庭規模の「ビッグバン」として解釈することも可能です。

この作品は、断片化がモダニティの明確な特徴であるという考え方を体現しています。それは、旧来の秩序やヒエラルキーが破壊され、多様性と包摂性が生まれることを象徴しています。破壊という行為が含まれる一方で、本作は変換、変容、そして「美的復活」もテーマとしています。パーカーは、爆発によって生じたカオスの中から秩序を再構築し、重力によって地上に引き寄せられる物体への彼女の関心も示しています。また、ありふれた日常のオブジェを芸術的な意味を持つものへと昇華させ、それらが持つ潜在的な力と神話的な存在感を浮き彫りにしています。

評価と影響

《コールド・ダーク・マター》は、コーネリア・パーカーの代表作の一つとして高く評価されています。1991年にチゼンヘール・ギャラリーで初めて展示されて以来、世界中の美術館で展示されてきました。 この作品は、既製のものや見つけられたオブジェの可能性を再活性化させ、その概念的な推進力と、時に極端な「本物」の素材を用いた手法は、ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)の運動の中でも重要な成功を収めました。鑑賞者は作品の中を歩き回り、物理的に体験することを促され、伝統的な鑑賞者とオブジェの関係に新たな視点を提供しています。 2022年にはテート・ブリテンで大規模な展示が行われるなど、その影響力は現代美術において今もなお色褪せることはありません。