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ダイニングルーム(フランシス・プレイス)I

サラ・ジョーンズ

サラ・ジョーンズ作「ダイニングルーム(フランシス・プレイス)I」

本作品は、イギリスのヴィジュアル・アーティストであるサラ・ジョーンズが1997年に制作したカラー写真作品「ダイニングルーム(フランシス・プレイス)I」です。アルミニウム板に貼付されたこの作品は、縦150.2センチ、横150センチのサイズを持ち、その精緻な構成が特徴です。テート美術館のコレクションに収蔵されており、現在は「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」展にて展示されています。

制作背景と意図 サラ・ジョーンズは1959年に生まれ、ゴールドスミス・カレッジでファイン・アートを学び、1996年の修了後に注目を集めました。彼女の作品は、アート史、精神分析、思春期、そしてヴィクトリア朝時代からの影響を深く受けて制作されています。 本作品を含む「ダイニングルーム(フランシス・プレイス)」シリーズは、上流階級のイギリスのカントリーハウスを舞台に、思春期の少女たちを被写体としたポートレートです。ジョーンズはこれらの少女たちを、中国のスープ容器やアンティークの木製テーブル、置時計といった家具や調度品との関連性において、静かで抑制された構図の中に配置しています。 少女たちはカメラに直接視線を向けることはなく、硬く、ほとんど人間離れしたようなポーズで立ったり座ったりしており、客観的かつ冷淡な態度で提示されています。この表現は、まるで少女たちが空間を構成する「物」の一部であるかのように見せ、鑑賞者に対して、女性がいかにして「モノ」として扱われ続けるかという点について、初期のフェミニズムが形骸化した現代においても根強く残る課題への微かな声明を発していると解釈されています。 また、彼女の作品は、独自のルールとフィクションを持つ世界という着想に基づいています。「ミラーリング(鏡像化)」の概念を探求しており、これは精神分析学に関連し、人々がお互いにどのように振る舞い、あるいはイメージやポートレートをどのように見るかという問いを含んでいます。

技法と素材 「ダイニングルーム(フランシス・プレイス)I」は、Cタイププリントと呼ばれるカラー写真技法を用いて制作され、アルミニウム板に貼付されています。この技法は、写真の色と質感を鮮やかに表現することを可能にしています。作品における照明と構図は非常に緻密に計算されており、装飾的な室内空間に若い女性たちを配置し、物憂げな表情を浮かべさせることで、背景や空間の作り方、被写体の配置に明確なコンセプトが見て取れます。

意味と評価 本作品は、一見するとオールド・マスターの絵画に由来するような古典的な静けさを持ちながらも、ラディカルな感覚を宿していると評されます。被写体が置かれた状況は、時にうつ伏せになったり、机やベッドの下に入り込んだりするなど、構図にアクセントを加えています。 サラ・ジョーンズは、1999年には東京都写真美術館で開催された第3回東京国際写真ビエンナーレに参加するなど、イギリス国内外の展覧会で作品を発表し、高く評価されています。本作品は、ブリティッシュ・アートにおける90年代の重要な作品群の一つとして認識されており、現在も美術界に影響を与え続けています。彼女の作品は、公共コレクションにも収蔵されています。