リチャード・ハミルトン
テート美術館の展覧会「YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」にて展示されるリチャード・ハミルトンの「一体何が今日の家庭をこれほどに変えているのか?」は、ポップ・アートの起源を象徴する作品です。本作品は、1956年に制作された同名のコラージュ作品を、作者自身が1992年にデジタル・プリントとして再解釈したものです。
オリジナル作品は1956年、ロンドンのホワイトチャペル・アート・ギャラリーで開催された展覧会「これが明日だ」のカタログのために制作されました。リチャード・ハミルトンは、ローレンス・アロウェイやエドゥアルド・パオロッツィらと共に「インディペンデント・グループ」のメンバーとして活動しており、大衆文化に対する批判的考察を行っていました。本作品は、第二次世界大戦後のアメリカにおける消費文化の隆盛と、大量生産された家庭用品への憧れを批評する意図を持っていました。作品のタイトル自体も、当時の人気雑誌の記事の見出しを模倣したものです。ハミルトンはポップ・アートの特徴として、「大衆向け」「一過性」「使い捨て」「安価」「大量生産的」「若者向け」「機知に富む」「セクシー」「見せかけ」「魅力的」「ビッグビジネス」といった要素を挙げています。
1956年のオリジナル作品は、主にアメリカの雑誌から切り抜かれたイメージを組み合わせたコラージュです。雑誌の広告写真や図版が用いられ、当時の大衆文化を構成する視覚要素が密に配置されました。
本展示で紹介される1992年版は、作者ハミルトン自身がデジタル技術を用いて再制作した「デジタル・プリント/紙」であり、サイズは21 × 29.8センチメートルです。ハミルトンは1980年代後半からコンピュータの画像加工ソフトを制作に取り入れており、この1992年の作品も、当時の先進的なデジタル・プリント技術を活用して制作されました。これは、彼が生涯を通じてメディアや技術の進化に関心を持ち、自身の代表作を新たな手法で探求し続けたことを示しています。メトロポリタン美術館にも、1992年のエレクトロフォトグラフィック・プリントが収蔵されています。
この作品は、家電製品、食料品、メディアのイメージなどで満たされた現代の居間を描いています。筋骨隆々のボディビルダーの男性と、セクシーなピンナップモデルの女性が配置され、彼ら自身もまた商品として提示されているかのようです。ハミルトンは、この作品を通して、日常におけるあらゆるものが商品化され、メディアが社会を形成する役割を果たす大衆消費文化を鋭く風刺しています。彼は、美術とプロダクトデザイン、そして大衆文化の関係性を探求しました。作品の問いかけのようなタイトルは、その答えが作品表面に散りばめられた消費者イメージの中にあることを示唆しています。
「一体何が今日の家庭をこれほどに変えているのか?」は、1956年の発表当時から高い評価を受け、ポップ・アートの発展を促進しました。伝統的な芸術の概念に挑戦し、大衆文化や広告の要素を作品に取り入れた象徴的な作品として位置づけられています。リチャード・ハミルトンは「ポップ・アートの父」と称され、ポップ・アートがアメリカで本格的に展開される以前に、イギリスの「インディペンデント・グループ」からその動きが始まったことを示す重要な存在です。彼の作品は、後に続くアメリカのポップ・アーティストたちの作品と比較して、より分析的で批評的な性格を持つと評価されています。1992年のデジタル・プリント版の制作は、ハミルトンが自身の初期の作品に用いられたテーマと構成を、当時の最先端技術で再考し続けたことの証でもあります。