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早くイッて、笑って

デイヴィッド・ロビリアード

デイヴィッド・ロビリアード 《早くイッて、笑って》

テート美術館が所蔵するデイヴィッド・ロビリアードの作品《早くイッて、笑って》は、1987年にアクリル・カンヴァスで制作された121.8 × 121.8 cmの絵画です。この作品は「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」展にて展示されています。ロビリアードの作品は、1990年代の英国アートシーンを代表するYBA(ヤング・ブリティッシュ・アーティスツ)の先駆者として位置づけられています。

背景と制作意図

デイヴィッド・ロビリアード(1952-1988)は、1975年にガーンジー島からロンドンに移住し、都市の豊かな芸術文化とクィア・カルチャーに深く関わりました。彼は独学で芸術を学び、特定の芸術学校には所属していませんでした。1979年にはアーティストデュオ、ギルバート&ジョージと出会い、彼らのアシスタントを務めながら、深い友情を育みました。ギルバート&ジョージはロビリアードの最大の支援者となり、彼に詩と絵画を組み合わせた制作を奨励しました。彼らはロビリアードを「現代人の新しい達人」と称し、その率直さ、悲しみ、絶望、そして人々への愛情が彼の作品に輝きと美しさをもたらしていると評価しています。

ロビリアードの作品は、彼の生来の詩的な才能に基づき、新鮮な直接性と妥協のない誠実さが特徴です。彼は1988年に36歳でエイズにより亡くなりましたが、HIVの診断後も、その詩人のダークなユーモアは作品の中で存続しました。彼の芸術は、1980年代のクィア・ロンドンにおける愛と人生の喜び、そして苦悩を照らし出し、当時の公共生活において問題視され、ほとんど存在しなかった「ゲイの経験」に触れるものでした。

技法と素材

ロビリアードの作品は、テキストと単純なアウトラインのドローイングを組み合わせた独自の視覚言語を特徴としています。本作品《早くイッて、笑って》も、この特徴的な「ポエム・ペインティング」のスタイルで制作されています。彼は原色を用い、詩的なテキストを大きな白いキャンバスの上に配置し、男性のスケッチと融合させる、あるいはほとんど覆い尽くすように描きました。男性の表情や全身の痕跡が、わずかな詳細で暗示される主要なモチーフとなっています。

彼の言葉は無邪気さと人生経験を対比させながら、不完全な人物像を優しく曲線的に描かれており、型にはまらない率直な表現が含まれています。これは、絵画という媒体の権威に疑問を投げかけるような、意図的に素朴なアプローチと見なされています。

意味

ロビリアードの絵画におけるテキストとイメージの融合は、深い人間性と脆弱性を伝えます。彼の作品は、個人的な経験やロンドンの芸術的・性的文化の観察を反映しており、当時の社会状況、特に英国で「第28条」が導入され、HIV/エイズの流行が始まった中で、クィア・コミュニティが直面した困難な状況を背景に、誠実かつ痛烈なメッセージを内包しています。彼は、悲しみの中にあっても、持ち前の機知に富んだ暗いユーモアを失うことはありませんでした。

評価と影響

デイヴィッド・ロビリアードは、その短い生涯にもかかわらず、その後のYBAに多大な影響を与えました。彼は少ない、安価な素材を用いて、より深遠な内容を生み出した点で、YBAの先駆者とされています。彼の欺瞞的に単純な作品は、今日に至るまで多くの現代アーティストにインスピレーションを与え続けています。

彼の作品は、ニューヨーク近代美術館やテート・モダンなど、主要な美術館に収蔵されています。1993年にはアムステルダム市立美術館で包括的な個展「A Roomful of Hungry Looks」が開催され、その独特なスタイルが没後に高く評価されました。