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世界の歴史

ジェレミー・デラー

テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート

ジェレミー・デラー《世界の歴史》

ジェレミー・デラーの作品《世界の歴史》は、1997年から2004年にかけて制作された、グラファイトとアクリルを用いた壁画であり、可変サイズで展示されます。この作品は、テート美術館が企画する「YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」展で紹介されています。

制作の背景・経緯・意図 《世界の歴史》は、イギリスの音楽ジャンルであるアシッド・ハウスとブラスバンドの間の社会、政治、音楽的なつながりを探るダイアグラム(思考の地図、フローチャート)として構想されました。 1996年に黒板にチョークで描かれたものが原型であり、その後壁画として制作されました。 この作品は、デラーが1997年に開始した「アシッド・ブラス」プロジェクトのコンセプトを視覚的に説明するもので、伝統的なブラスバンドがアシッド・ハウスの楽曲を演奏するという試みの裏付けとなっています。

デラーの意図は、これら一見すると関連性のない二つの音楽ジャンルを通して、1980年代のサッチャー政権下における脱工業化社会への移行期や、進んだ資本主義に対する文化的な反発、および労働者階級のコミュニティの歴史を考察することにありました。具体的には、1984年の炭鉱ストライキとレイヴ・シーン(特に1994年の刑事司法及び公安法によって閉鎖されたキャッスルモートン・レイヴ)といった重要な出来事を関連付けています。 デラーは、これら二つの音楽形式を「特定のコミュニティに根ざした真正なフォークアート」と捉え、資本主義の歴史的プロジェクトと、それが共同体的な生活様式に与える影響に疑問を呈しています。

技法や素材 作品は、グラファイトとアクリルを使用して壁に直接描かれたダイアグラム形式です。 手書きの線で様々な文化現象をつなぎ合わせ、広範囲にわたる思考のプロセスを視覚化しています。 そのサイズは展示空間によって可変であり、作品自体が柔軟性を持つことを示しています。

意味 《世界の歴史》は、音楽と社会史、政治の関係性を探求し、レイヴ時代の状況に対するデラー自身の思考プロセスを視覚化したものです。 アシッド・ハウスの共同体精神と北部のブラスバンドの共同体音楽の伝統という、異なる文化的な要素を結びつけることで、文化的な論文としての役割を果たしています。 また、これは、支配的な物語に対する「抵抗」として民衆の歴史を位置づけ、従来の歴史の制約に異議を唱え、新旧を関連付けることで現代のつながりのための工場空間を焦点に当てています。 アシッド・ハウスとブラスバンドが社会や政治の秩序に対して共有する「異議」の要素も強調されています。

評価や影響 《世界の歴史》は、デラーのキャリアにおける重要な作品の一つとされています。 この作品は「アシッド・ブラス」プロジェクトの青写真となり、デラーの文化的テーゼを大衆文化へと広げることに貢献しました。

デラーは2004年にターナー賞を受賞しており、《世界の歴史》は2003年のターナー賞展で展示された作品の一つでした。 この作品を通じて、デラーは従来の芸術の概念に挑戦し、共同制作や一般参加を重視する姿勢を確立しました。 彼は、「もはや物体を作る必要はない」と語り、イベントを企画し、人々と協働することから解放されたと感じたと言います。 作品のアイデアは、壁画やアルバムカバーアート、さらにはカーペットなど、様々な媒体で展開され、その影響力と適応性を示しています。