ルーシー・ガニング
本記事では、「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」展に出品されている、アーティスト、ルーシー・ガニングによる作品《馬のものまねをする人たち》を紹介します。
ルーシー・ガニングは、1964年生まれのイギリスのビジュアルアーティストであり教育者です。彼女は、映像、インスタレーション、彫刻、ビデオ、パフォーマンスアートを含む学際的な実践で知られています。ガニングはファルマス大学で美術彫刻の学士号を、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジで美術の修士号を取得しました。
作品《馬のものまねをする人たち》は、1994年に制作されたビデオ作品です。カラー、サウンド、そして約7分30秒の映像で構成されています。この作品は、彼女の初期の作品の一つであり、高い評価を得ました。1990年代に登場した「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)」の世代に属するアーティストの一人として、ガニングは当時の英国アートシーンにおける重要な存在です。
ガニングの作品は、しばしばパフォーマティビティ、時間性、空間、物質といったテーマを探求し、フェミニスト、クィア、脱植民地化、エコロジーの視点を取り入れています。彼女は、建築、文脈、行動、そして心理的および物理的な空間を、ドキュメンタリー映像と緻密に構成されたイベントを組み合わせることで探ります。
《馬のものまねをする人たち》は、「演じること(acting out)」という概念を扱っています。このビデオでは、5人の女性が馬のように嘶いている様子が映し出されています。この作品は、女性が動物界に近い存在であり、ヒステリックな模倣的同一化に陥りやすいという伝統的な西洋の信念を再確認する危険性もはらんでいると解釈されることがあります。しかし同時に、現代美術の実践が「生成変化(becoming)」をいかに刺激し、具現化できるかという問いを提起しています。
ガニングは、ルーシー・イリガライとドゥルーズ=ガタリの「生成変化」の概念間のインターフェースを探求し、ジェンダー化された身体性のある主体性、すなわち身体の「症状」それ自体に意味を見出し、それを必ずしも連続的な言語的枠組みに翻訳する必要はないという身体哲学の可能性を作品を通して開いています。彼女は、形式的な行動への注目に、比喩やユーモアの複雑さを重ね合わせ、状況自体が独自の言語と構造を決定するといった側面も作品に与えています。
この作品は、カラーとサウンドを用いたビデオというメディアで制作されています。ガニングは、ドキュメンタリー形式の撮影から、被写体を構造化し振り付けを施して撮影するものまで、幅広いスタイルで映像作品を制作しています。彼女の作品では、多様な素材や空間的要素が並置されることが多く、この作品もまた、生々しい人間の行動を記録するという形で、そのアプローチの一端を示しています。
《馬のものまねをする人たち》は、ルーシー・ガニングの初期の代表作として、批評家から高く評価されました。彼女の作品は、その「気まずい状況を恐れない」姿勢と、カメラが「私たちの生活の無差別な覗き見者」となるような視点によって注目を集めています。
本作品は、「テート美術館 ― YBA & BEYOND 世界を変えた90s英国アート」展に選出されることにより、1990年代の英国アートシーンにおけるその歴史的および芸術的重要性が再認識されています。ガニングの作品は、テート・ギャラリー、ポンピドゥー・センター、富山県立近代美術館など、著名な公共コレクションに収蔵されています。彼女は、ポール・ハムリン財団賞(2004年)やローマ奨学金(2001年)など、数々の賞も受賞しており、現代アートにおけるその影響力は広く認められています。