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夏の夜(習作)

オット・ヘッセルボム

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展覧会では、オット・ヘッセルボムによる作品「夏の夜 (習作)」が展示されています。この作品は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのスウェーデン美術における重要な潮流と、画家の独自の感性を映し出すものです。

作品の背景・経緯・意図

「夏の夜 (習作)」は、スウェーデンの画家オット・ヘッセルボムが制作した風景画です。この作品が生まれた背景には、1880年代頃からフランスで写実主義などを学んだ若いスウェーデン人芸術家たちが、帰国後に自国のアイデンティティを示す芸術を創造しようとした動きがあります。彼らは、フランスの印象派のような様式とは異なる、「スウェーデンらしさ」を追求し、自然や身近な人々、日常に潜む輝きを、より親密で情緒豊かな表現で描き出しました。

特に、北欧の夏の夜に特徴的な、長く続く薄明の光は、この時代のスウェーデン風景画における重要な主題の一つとなりました。ヘッセルボムは、ダールスランド地方の風景を基盤としながらも、その作品が地域性にとどまらず、国民的な性格を持つと評価されています。彼の作品は、単なる風景描写に留まらず、「時間の詩」として北欧の自然の豊かさを照らし出すことを意図していたと考えられます。

技法や素材

「夏の夜 (習作)」は、油彩でカンヴァスに描かれた作品です。オット・ヘッセルボムは、1900年前後の多くの芸術家と同様に、輪郭を強調することでモチーフを様式化する技法を用いていました。彼の描く線は、ウィーン分離派の装飾的な効果や、古ノルドの装飾様式への関心を示唆しています。この力強い線描と、夏の光を繊細かつ写実的に表現する技法が組み合わされているのが特徴です。作品のサイズは、高さ55センチメートル、幅92センチメートルです。

作品が持つ意味

本作品「夏の夜 (習作)」は、北欧の「光」と「自然」が持つ独特の美しさを表現しています。特に、北欧の夏の夜の、青みがかった静寂とゆっくりと暮れていく太陽の光景は、あたかも一片の詩のようであると評されています。光と闇のコントラストの中に輝く湖面の美しさは、まさに北欧のイメージそのものを象徴しています。この作品は、スウェーデンの画家たちが追求した、自然と共に豊かに生きる北欧ならではの感性、そして自国の風景の中に新たな美を見出そうとする精神を体現していると言えるでしょう。

評価や影響

オット・ヘッセルボムは、スウェーデンの風景画家として知られています。彼の作品を含む19世紀末から20世紀初頭のスウェーデン絵画は、近年世界的に注目を集めており、本展覧会もスウェーデン美術の黄金期を本格的に紹介するものです。ヘッセルボムの「夏の夜 (習作)」に代表される、北欧の夏の夜の薄明を捉えた作品群は、スウェーデンの芸術家たちが、フランスで学んだレアリスムや自然主義の様式から離れ、自国の自然の中に独自の表現を見出した証しとなっています。これらの作品は、スウェーデン独自の美意識と、自然への深い敬愛を伝えるものとして、後世の芸術家や鑑賞者に影響を与え続けています。