ブリューノ・リリエフォッシュ
東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」にて展示される、ブリューノ・リリエフォッシュの作品《ダイシャクシギ》についてご紹介します。
ブリューノ・リリエフォッシュ《ダイシャクシギ》
この作品は、スウェーデンが誇る動物画家ブリューノ・リリエフォッシュが1907年に油彩でカンヴァスに描いた《ダイシャクシギ》(Eurasian Curlew)です。高さ134センチメートル、幅112センチメートルで制作されました。
制作の背景と意図 ブリューノ・リリエフォッシュは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活動したスウェーデンの最も重要な野生動物画家の一人です。彼は、単なる動物の肖像画に留まらず、動物たちが生きる自然環境の中での躍動的な姿をリアルに描写することを目指しました。幼少期から自然と動物に深い関心を持ち、その観察眼は類稀なるものでした。彼は動物たちの動きや生態を正確に捉えるため、望遠鏡を片手に野外で直接観察したり、時には隠れ家を設けたり木に登ったりして、生きた被写体を研究するという独特の手法を用いていました。また、彼の作品には、捕食者と被食者の関係といった生態学的なテーマが描かれることも多く、その描写は感傷的ではなく、自然の厳しさをも客観的に表現しています。
技法と素材 リリエフォッシュは油彩を主な素材として使用し、カンヴァスに描いています。彼の画風は、印象派の筆致と綿密な写実主義が融合しているのが特徴です。特に、自然の中で直接描く「屋外制作(プレイン・エア・ペインティング)」の技法を習得し、動物の真の動きや行動を捉えることに長けていました。また、日本の浮世絵からも影響を受けたとされており、構図や余白の取り方、時にコラージュのように画面を階層化する表現、高い地平線を取り入れるなど、多様なスタイルを実験しました。彼の作品では、動物の保護色を巧みに取り入れ、動物が周囲の環境に溶け込む様子も表現されています。
作品が持つ意味 この《ダイシャクシギ》は、リリエフォッシュが深く理解し愛した自然界の一端を切り取ったものです。彼は動物の単なる外見だけでなく、その精神や存在感を捉えることを追求しました。作品に描かれたダイシャクシギは、その環境に自然に存在し、鑑賞者に生命の息吹と自然界の調和、あるいはその厳しさを感じさせます。リリエフォッシュの作品は、19世紀末から20世紀初頭のスウェーデンの若い芸術家たちが、フランスで学んだレアリスムや自然主義から離れ、自国の自然や日常、感情に根ざした独自の芸術を創造しようとした動きの中で生まれました。
評価と影響 ブリューノ・リリエフォッシュは、野生動物画の分野において最も影響力のある人物の一人として高く評価されています。彼の鳥を描いた作品は、その画期的な写実性と印象派的な筆致の組み合わせにより、象徴的なものとされています。彼は、野生動物画を単なる記録から、生命の営みを鮮やかに描き出す生態学的物語へと昇華させ、このジャンルに革命をもたらしました。彼のダイナミックな構図と写実的な動物描写は、その後のスウェーデンの漫画家やイラストレーターにも影響を与えたと言われています。この作品が展示される東京都美術館開館100周年記念展は、「自然」「光」「日常のかがやき」をキーワードに、スウェーデンならではの豊かに自然と生きる感性に迫るものであり、リリエフォッシュの作品はまさにその精神を体現しています。