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ケワタガモ

ブリューノ・リリエフォッシュ

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示された、ブリューノ・リリエフォッシュの作品《ケワタガモ》についてご紹介します。


作品紹介:ブリューノ・リリエフォッシュ《ケワタガモ》

本作品《ケワタガモ》は、1894年にスウェーデンの画家ブリューノ・リリエフォッシュによって制作されました。油彩・カンヴァスの技法で描かれ、サイズは80×96cmであり、スウェーデン国立美術館が所蔵しています。

制作背景と意図 ブリューノ・リリエフォッシュ(1860-1939)は、19世紀後期から20世紀初期にかけて活動したスウェーデンの国民的画家であり、特に野生動物を描くことを得意としました。 彼は単なる動物の描写に留まらず、自然に生きる動物たちの姿を臨場感たっぷりに描き出すことを追求しました。 その制作にあたり、リリエフォッシュは望遠鏡を片手に自ら野に分け入り、鋭い観察眼で自然界の動物たちを観察しました。 また、自宅の敷地内にアトリエを設け、野生動物を捕獲して飼育し、その詳細な観察をもとに作品を描いたとされています。狩猟で得た獲物を観察することもあったと言われています。 彼は、野にいる手つかずの自然環境の動物たちの姿を、まるでスナップ写真のようなリアリズムをもって捉えることを意図していました。 さらに、リリエフォッシュは日本美術からも影響を受けたとされており、屏風に色紙や短冊を貼り付ける日本の「貼交(はりまぜ)」の技法から着想を得たとも言われています。彼の作品には、主題となる動物と背景(草原や水面など)のバランスから、水墨画に見られるような「余白の美」が感じられることがあります。

技法と素材 《ケワタガモ》は、カンヴァスに油絵具を用いて描かれています。 リリエフォッシュの絵画技法は、対象となる動物の生態や周囲の環境を細部にわたって忠実に再現することに重きを置いています。彼は写実的な表現を追求し、必要に応じて写真も制作の補助として活用していました。 本作品においても、ケワタガモの姿がその自然な生息環境の中で生き生きと捉えられており、油彩による深みのある色彩と精緻な描写が、作品に生命感を与えています。

作品が持つ意味 リリエフォッシュの作品は、野生動物のありのままの姿と、彼らが生きる自然の美しさを伝えています。 《ケワタガモ》もまた、ケワタガモという特定の鳥種の生態と、その周囲の水の輝きや空気感を克明に描き出すことで、北欧の自然が持つ厳しさの中の生命の輝きを表現しています。彼の動物画は、単なる写生ではなく、生命の尊厳や自然との共生といった普遍的なテーマを内包していると言えるでしょう。

評価と影響 ブリューノ・リリエフォッシュは、ヨーロッパを代表する動物画家の一人として高く評価されています。 彼の研ぎ澄まされた観察眼と自然の再現性は、当時の美術界において特筆すべきものとされました。 特に、野生動物をその手つかずの自然環境の中にリアルに描き出す彼のスタイルは、後世の画家たちにも大きな影響を与えました。彼の作品は、スウェーデンのみならず国際的にも認められ、多くの主要な展覧会で展示されています。 《ケワタガモ》を含む彼の作品群は、北欧美術における自然描写の傑作として、今もなお多くの人々を魅了し続けています。