ゴットフリード・カルステーニウス
東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展で展示されている、ゴットフリード・カルステーニウスの油彩画「群島の日没」は、スウェーデンの風景画における詩情豊かな表現を示す作品です。
「群島の日没」は、スウェーデンの画家ゴットフリード・カルステーニウスによって1907年に制作されました。カルステーニウス(1861-1943)は、スウェーデン南東部のヴェステルヴィークに生まれ、1884年から1888年までスウェーデン王立美術院で学びました。その後、奨学金を得てパリでラファエル・コランに師事し、ブルターニュのル・プールデュやスウェーデン人芸術家コロニーがあったグレ=シュル=ロワンでも制作を行いました。1893年から1894年にかけてイタリアを訪れ、装飾芸術への関心を深めています。初期には写実主義的なスタイルで制作していましたが、後にその表現から脱却しました。
カルステーニウスは、1890年代のスウェーデン美術における「大気主義(Atmospheric)」の優れた担い手の一人であり、「北欧の光(Nordic Light)」と呼ばれるスカンジナビア美術運動の代表者でもあります。 彼の作品は、印象派の要素と独自の北欧的な感性を融合させており、移ろいゆく光と自然の風景との深いつながりを表現することに長けていました。 この「群島の日没」も、こうした彼の芸術的探求の中で生まれたものです。作品のモチーフは、画家とその妻ゲルダが1895年から1896年にかけて滞在したトロサ群島のボース島に触発された可能性が高いとされています。
本作品は、油彩が用いられ、キャンバスに描かれています。 サイズは111 x 131センチメートルです。 カルステーニウスは油彩画に関する複数の著書も残しており、画材や顔料に関する深い知識を持っていたことがうかがえます。 「群島の日没」では、夕暮れの柔らかい色合いと、沈みゆく太陽の温かい輝きを描き出すために、油絵具の特性が最大限に活用されています。
この作品は、スウェーデンの群島が持つ穏やかで情緒豊かな美しさを捉えています。 静かな海と、たおやかな夕焼けの空を背景にシルエットとなった一本の木が描かれ、黄昏時の風景を構成しています。 写実主義から、風景の感情的、大気的な質を探求するスタイルへと移行したカルステーニウスの転換期を示す作品の一つであり、光と自然の描写における彼の卓越した技術が示されています。 夜が訪れる直前、夕日に照らされる魔法のような瞬間を表現しており、観る者に北欧の自然が持つ静謐な情感を伝えます。
「群島の日没」は、現在スウェーデンの国立美術館に収蔵されており、カルステーニウスの代表作の一つとして高く評価されています。 本作品は、東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展において、「VI 自然とともに――新たなスウェーデン絵画の創造」と題されたセクションに展示されています。 このセクションでは、スウェーデンならではの豊かな自然をモチーフに、画家たちが感情や雰囲気を伝えようと模索した風景画が紹介されており、黄昏時や夜明けの淡い光の描写が鑑賞者を作品の世界観に深く引き込むと評されています。 この展覧会は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのスウェーデン美術の「黄金期」の絵画を本格的に紹介するもので、スウェーデン国立美術館の全面協力のもと、日本では初めてスウェーデン絵画に特化した展示として注目を集めています。 カルステーニウスの作品は、北欧美術の新たな魅力を伝える重要な役割を担っています。