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ヴェストマンランド地方、エンゲルスバリの湖畔の眺め

オーロフ・アルボレーリウス

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」にて展示される、オーロフ・アルボレーリウスの作品「ヴェストマンランド地方、エンゲルスバリの湖畔の眺め」を紹介します。

作品概要

オーロフ・アルボレーリウス(1842-1915)は、スウェーデンを代表する風景画家、風俗画家です。彼の作品「ヴェストマンランド地方、エンゲルスバリの湖畔の眺め」は1893年に制作された油彩画であり、その描写はスウェーデンの自然観を象徴するものとして高く評価されています。作品の寸法は縦81cm、横120cmです。

制作背景と意図

アルボレーリウスは、ストックホルムのスウェーデン王立美術院で学んだ後、エドワード・ベルクに師事しました。奨学金を得てデュッセルドルフ、パリ、ミュンヘン、ローマで研鑽を積み、バルビゾン派の影響を深く受けたことで知られています。初期にはデュッセルドルフ派の影響も見られますが、後年には戸外制作(プレインエア絵画)の手法を取り入れました。彼は1880年代には革新的な美術運動である「反対派(オポーネンテルナ)」に参加しましたが、印象派に直接的に傾倒することはありませんでした。しかし、その「自由なレアリスム」の姿勢を取り入れ、色彩をより鮮明にし、構成において堂々たる表現を追求しました。

本作品は、ヴェストマンランド地方エンゲルスバリの湖の風景を題材としています。この地域はスウェーデン中部に位置し、豊かな湖と森林に特徴づけられます。 アルボレーリウスは、鏡のように澄み切った湖面に木々や雲が映り込む様子を、スウェーデンの典型的な、静かで澄んだ夏の日の光の中で捉えようとしました。

本展覧会「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのスウェーデン美術の黄金期に焦点を当てています。1880年頃にフランスでレアリスムを学んだ若い世代の芸術家たちが、帰国後に自国の自然や日常を親密かつ感情豊かに描くことで、スウェーデン独自の芸術を確立しようとした軌跡をたどります。本作品は、そうした「自然」「光」「日常のかがやき」というキーワードを通じて、現代スウェーデンのウェルビーイングな暮らしのルーツを感じさせるものとして位置づけられています。

技法と素材

使用されている素材はキャンバスに油彩です。 アルボレーリウスの作品は写実的な描写と色彩の明瞭さ、そして奥行きのある雰囲気で知られています。 彼の後年の作風では、より鮮明な色彩と記念碑的な構図が見られます。 本作でも、透明感のある光の表現と水面の描写にその技法が遺憾なく発揮されています。

作品の持つ意味

「ヴェストマンランド地方、エンゲルスバリの湖畔の眺め」は、単なる風景画以上の意味を持つ作品です。この絵画は、描かれた翌年の1894年にはスウェーデン国立美術館に収蔵されました。 そして1935年にはスウェーデン観光協会によって「スウェーデンの象徴的な絵(Sverigetavlan)」として認定され、国民にとって「最もスウェーデンらしい風景」を描いた作品として広く知られるようになりました。 これは、スウェーデンの自然の美しさと国民的アイデンティティを深く表現していることの証しと言えます。

評価と影響

本作品は、スウェーデン国立美術館のコレクションの中でも特に愛されている作品の一つであり、来館する多くの画家や美術学生によって最も多く模写されてきた作品としても知られています。 その普遍的な美しさとスウェーデンという国の本質を捉えた描写は、時代を超えて多くの人々に影響を与え続けています。本展覧会においても、鑑賞者が北欧の自然を感じ、光の表現を深く味わうための重要な作品として紹介されています。