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ティンメルマンスガータン通りの風景

エウシェーン・ヤーンソン

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示される、エウシェーン・ヤーンソンの作品《ティンメルマンスガータン通りの風景》を紹介します。

作品名: ティンメルマンスガータン通りの風景 (Motif from Timmermansgatan) 制作年: 1899年 作者: エウシェーン・ヤーンソン (Eugène Jansson, 1862-1915) 素材・技法: 油彩、カンヴァス

作品の背景・経緯・意図

スウェーデンを代表する画家の一人であるエウシェーン・ヤーンソンは、特にストックホルムの夜景や都市景観を描いた作品で知られています。彼はストックホルムのセーデルマルム地区、ティンメルマンスガータン通りを含む複数の場所に居住し、そこからの眺めが彼の作品の着想源となりました。 ヤーンソンの「青の時代」と呼ばれる1890年から1904年頃は、ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクの表現主義的なスタイルに影響を受け、彼の芸術的転換期にあたります。 この時期、彼は夕暮れや夜のストックホルムを主題とし、しばしばメランコリックで象徴的な雰囲気を帯びた作品を制作しました。 本作《ティンメルマンスガータン通りの風景》もこの時期に描かれ、都市の中にひそむ輝きを親密かつ情緒豊かに表現しようとする、当時のスウェーデンの芸術家たちの試みを体現しています。

技法と素材

この作品は油彩が用いられたカンヴァス画です。 ヤーンソンは、描く対象を入念に観察した後、記憶に基づいて作品を制作する独自の技法を発展させました。 彼は作品全体を深く豊かな青のグラデーションで描くことで知られ、「青の画家」という愛称で呼ばれることもあります。 《ティンメルマンスガータン通りの風景》においても、強烈で雰囲気のある色彩と光が特徴であり、彼が光と影を巧みに操り、深みと感情を生み出す手腕が示されています。 筆致は繊細さと表現力を兼ね備え、質感豊かな描写がなされています。 画面に薄い絵具の層を塗った後、さらに厚く重ね、乾く前に不要な部分をパレットナイフで削り取ることで、カンヴァスの質感を露出させる独自の表現も用いました。

作品の意味

《ティンメルマンスガータン通りの風景》は、夜の街路の輝く情景を捉え、都市空間における孤独と内省を呼び起こす作品と評されています。 画面には、荒れた空の下、高くそびえる暗い建物の脇を上る急な階段のある、陰鬱でありながら光を放つ街並みが描かれています。 暗い茶色と青を基調とした色彩の中に、窓から漏れる温かい光がアクセントとなり、孤独や瞑想の感情を喚起します。 渦巻くような表情豊かな空は、劇的でどこか不気味な雰囲気を強調しています。 階段は謎めいた上向きの方向へと続き、鑑賞者の視線を都市の迷宮、あるいはまだ見ぬ地平へと誘います。 ヤーンソンの「青の時代」のストックホルムの絵画は、人影のない通りやたそがれの光景を描くことで、物悲しく象徴的なムードを醸し出しており、この作品も夜の情景と光の繊細なニュアンスを表現する彼の深い魅力が表れています。

評価と影響

エウシェーン・ヤーンソンは、そのユニークなスタイルで美術界に消えることのない足跡を残した著名なスウェーデンの画家として評価されています。 彼は「世紀転換期の画家の中で最も大胆な色彩家であり、その芸術において表現力豊かで、情熱的、独創的かつ過激」と称されました。 1890年代から1904年頃までの「青の時代」に制作されたストックホルムの夜景を描いた作品群は、彼に大きな名声をもたらしました。 《ティンメルマンスガータン通りの風景》は、彼が伝統的な風景画からより抽象的な夜景へと移行する典型的な例とされています。 ヤーンソンの芸術の旅は、アイデンティティ、感情、そして人間の形態の探求を反映しており、彼の風景画や示唆に富む描写は高く評価され、今日まで語り継がれています。 彼の絵画は、鑑賞者の感情に深く訴えかけ、没入感があり、夢のような体験を生み出す力を持っています。