エウシェーン・ヤーンソン
東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展に出品された、エウシェーン・ヤーンソンの作品「首都の郊外」について紹介します。
「首都の郊外」(スウェーデン語原題:Stadens Utkant)は、スウェーデンの画家エウシェーン・ヤーンソンによって1899年に制作された油彩画です。 サイズは縦152cm、横136cmであり、ストックホルムの国立美術館に所蔵されています。
エウシェーン・ヤーンソンは、生涯をストックホルムのセーデルマルムで過ごし、その地の風景を主な画題としました。彼は14歳の時に猩紅熱を患い、視力や聴覚の障害、慢性的な腎臓病を抱えながらも制作を続けました。 フランスで多くの同時代の画家が学んだ写実主義や自然主義から離れ、自身の感情や叙情的な雰囲気を重視した独自の表現方法を確立した、19世紀末のスウェーデン美術の「黄金期」を代表する画家の一人です。
この時代、スウェーデンの画家たちは、自国独自の風景や日常の輝きを表現することを探求していました。 ヤーンソンは特に夜景や都市の風景を多く描き、青色の色調が支配的な作品で知られ、「青の画家」(blåmålaren)と称されました。 「首都の郊外」もこの「青の時代」の作品であり、都市の周縁部にある風景を通して、スウェーデン特有の自然や光、そしてそこで営まれる生活への温かいまなざしを表現しようとする意図があったと考えられます。
本作はキャンバスに油彩で描かれています。 ヤーンソンの特徴である、青を基調とした夜景や都市景観の描写は、本作にも見られます。 展示会の感想からは、「青空なのに淋しい生き物の気配がない不思議な絵」と評されるように、独特の色彩と雰囲気が特徴的であることがうかがえます。 また、この時期の北欧絵画には、モチーフが明確な境界線で区切られ、光の跡がくっきりと描かれる技法や、対照的な色彩の組み合わせが用いられることが多いという指摘もあります。
「首都の郊外」というタイトルは、都市と自然の境界に位置する場所を描いていることを示唆しています。ヤーンソンが自身の生活圏であったストックホルムとその周辺を主な画題としたことから、彼にとって身近な風景であったと考えられます。 彼の作品に共通する青のトーンは、しばしば静けさや瞑想的な雰囲気を醸し出し、孤独感や叙情性を喚起します。この作品もまた、都市の喧騒から離れた場所の静けさや、北欧特有の光が織りなす神秘的な情景を描き出していると言えるでしょう。 スウェーデンの画家たちが追求した「本国ならではの芸術」の一環として、この作品は、厳しいながらも豊かな自然と、それに寄り添う人々の日常の輝きを、画家自身の感性を通して表現しています。
エウシェーン・ヤーンソンは、「青の画家」としてその個性的なスタイルが確立されており、スウェーデン美術史において重要な位置を占める画家です。 彼の作品「首都の郊外」がスウェーデン国立美術館に収蔵されていることは、その美術的価値と国家的遺産としての重要性を示しています。
東京都美術館開館100周年記念として開催された「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展は、スウェーデン国立美術館の全面協力のもと、19世紀末から20世紀にかけてのスウェーデン美術の黄金期を本格的に紹介する日本初の展覧会であり、ヤーンソンの作品が展示されたこと自体が、彼の国際的な評価と影響力の高まりを物語っています。 近年、スウェーデン国外でも大規模な展覧会が開催されるなど、スウェーデン絵画は世界的に注目を集めており、ヤーンソンもその中心を担う画家の一人として再評価が進んでいます。