アーンシュト・ヨーセフソン
東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展で紹介される、アーンシュト・ヨーセフソンの作品「恍惚とした人々(Ecstatic Heads)」について解説します。
スウェーデンの画家であり詩人であるアーンシュト・ヨーセフソン(1851-1906)は、アカデミックな写実主義から出発し、やがてより表現豊かで象徴主義的な作風へと移行しました。彼の作品は、北欧の民間伝承や日常生活から多くのインスピレーションを得ていました。ヨーセフソンの生涯は精神的な不調の時期によって中断されましたが、その間も想像力豊かで強烈な作品を生み出し続けました。
彼の精神状態が悪化し、ウプサラの精神病院に入院していた時期には、歪んだフォルムと強調された感情表現を特徴とする並外れた作品群を制作しています。この時期、ヨーセフソンはラファエロやレンブラントといった故人の芸術家の霊をチャネリングしていると主張し、自身の作品に彼らの名を署名することもありました。本作「恍惚とした人々」は、彼のこうした晩年の幻想的な時代、あるいは「霊感に満ちた狂気」の産物として位置づけられています。人間心理と表現の深淵を探求し、深い精神的意味合いを持つことが意図されています。
「恍惚とした人々」は油彩で描かれたキャンバス作品です。ヨーセフソンは色彩と筆致を駆使し、絵画に非現実的な質感を付与しています。土のような色調と鮮やかな色合いが混じり合い、定義されていない没入感のある背景に浮かび上がる顔の表情が際立っています。
この絵画は、感情と抽象表現が魅力的に融合した作品です。絡み合った顔と鋭い眼差しの曖昧な構図が特徴です。中央には思索にふけるような表情の青白い女性像が描かれ、わずかにねじれた姿は動きを感じさせます。彼女を取り囲むように、それぞれが独特な特徴を持つ3つの顔(厳粛な顔、威厳のある顔、髭を蓄えた顔)が配され、画面全体に静けさと神秘性の入り混じった雰囲気を生み出しています。
登場人物たちの表現豊かな瞳と曖昧な相互作用は、鑑賞者に人物間の深い繋がりや、彼らの精神的あるいは感情的な状態について深く考察することを促します。作品のタイトル「恍惚とした人々」自体が、強烈な感情、おそらくは精神的または幻視的な恍惚状態を示唆しており、彼が霊的な存在をチャネリングしていたと主張した精神的苦悩の時期の内面世界を反映していると考えられます。
アーンシュト・ヨーセフソンは、19世紀スウェーデンを代表する芸術家の一人として認められています。彼の作品はスカンジナビアの主要な美術館に収蔵されており、特に「恍惚とした人々」はストックホルム国立美術館が所蔵しています。
彼の芸術は、その生々しい感情の正直さ、人間心理の探求、そして従来の芸術や表現の概念に挑戦する先駆的な役割が高く評価されています。ヨーセフソンは表現主義の先駆者と見なされており、彼の幻想的でシュールな後期作品は、20世紀の芸術運動の発展を予見しつつ、独特の北欧的感性を保持していました。パブロ・ピカソ、アンリ・マティス、オスカー・ココシュカといった後の芸術家たちにも影響を与えたとされています。彼の精神疾患期に制作された作品は、かつては単に病の産物と見なされることもありましたが、現在ではその芸術的価値と、象徴主義における画期的な性質が再認識されています。