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フリッティオフの帰還 (エサイアス・テグネール「フリッティオフ物語」より)

アウグスト・マルムストゥルム

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」にて展示されている、アウグスト・マルムストゥルムの作品《フリッティオフの帰還 (エサイアス・テグネール「フリッティオフ物語」より)》について紹介します。

作品情報

  • アーティスト名: アウグスト・マルムストゥルム
  • 作品名: フリッティオフの帰還 (エサイアス・テグネール「フリッティオフ物語」より)
  • 作品詳細: Frithiof's Return from "Frithiof's Saga"
  • 制作年: 1880年代
  • 技法・素材: カンヴァスに貼られた紙に油彩
  • サイズ: 99 x 70.2 cm
  • 所蔵: スウェーデン国立美術館

背景・経緯・意図

19世紀のスウェーデンで活躍した画家アウグスト・マルムストゥルム(1829-1901)は、田園風景や子どもたちをモチーフにした作品で知られていました。彼は、ゴート主義と呼ばれる国民的ロマン主義の影響を受け、北欧神話から着想を得た題材も描いています。 この《フリッティオフの帰還》は、エサイアス・テグネール(Esaias Tegnér)が著した有名な叙事詩『フリッティオフ物語』に題材を得た連作の一つとして制作されました。19世紀に入り、ヨーロッパ各国でナショナリズムが高まる中、自国固有の主題を描くことが重視され、北欧神話や民話への関心が高まりました。マルムストゥルムは、こうした潮流の中で北欧の歴史や伝説、神話のテーマに取り組んだ画家であり、この作品もスウェーデンの文化的アイデンティティを探求する意図が込められています。 『フリッティオフ物語』は、英雄的なヴァイキングであるフリッティオフと、ソグンの王ベレの娘インゲボリ姫との愛の物語です。フリッティオフがインゲボリの兄たちから結婚を拒絶され、追放された後、富を築き、最終的に故郷に帰還し、インゲボリと再会するまでの冒険と裏切りが描かれています。

技法・素材

本作は1880年代に制作され、カンヴァスに貼られた紙に油彩で描かれています。サイズは99 x 70.2 cmです。マルムストゥルムはアカデミックな古典主義の画風で描きました。

意味

作品が描く「フリッティオフの帰還」は、『フリッティオフ物語』における重要な局面であり、主人公が試練を乗り越え、故郷と愛を取り戻す瞬間を象徴しています。この物語自体が、愛、名誉、冒険といった普遍的なテーマを織り交ぜながら、北欧の伝説的な英雄像を描き出しています。マルムストゥルムがこの題材を選んだことは、19世紀のスウェーデンにおいて、古くから伝わる物語を通じて祖先の歴史や文化に連なり、国民的な物語を絵画として視覚化することに価値が見出されていたことを示しています。

評価・影響

アウグスト・マルムストゥルムは、北欧神話や民間伝承を主題とした作品を多く手がけ、19世紀のスウェーデン美術において重要な存在でした。彼の『フリッティオフ物語』に基づく連作は、当時の国民的ロマン主義の潮流を代表する作品として評価されています。エサイアス・テグネールの『フリッティオフ物語』は「不滅のスカンディナヴィアの物語」として、歴史を通じて多くの作曲家や芸術家に影響を与えており、マルムストゥルムの絵画もその視覚化に貢献しました。 本作品は、東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展において、北欧の神話的世界や内面を描いた作品群の一つとして展示されており、スウェーデン美術史におけるその位置づけの重要性が示されています。