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画家ブリューノ・リリエフォッシュ

アンデシュ・ソーン

東京都美術館開館100周年記念 スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき

アンデシュ・ソーン作 「画家ブリューノ・リリエフォッシュ」

東京都美術館開館100周年記念として開催された「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展は、スウェーデン美術の黄金期にあたる19世紀末から20世紀初頭にかけての絵画を本格的に紹介する展覧会です。この展覧会では、スウェーデン固有の自然や人々の暮らし、日常に潜む輝きを親密かつ情緒豊かに表現した約80点の作品が展示されました。その中の一点である、アンデシュ・ソーンが描いた「画家ブリューノ・リリエフォッシュ」は、スウェーデン美術史における重要な二人の画家の関係性を示す肖像画です。

画家アンデシュ・ソーンについて

アンデシュ・ソーン(1860-1920)は、スウェーデンを代表する国民的画家であり、彫刻家、エッチング版画家としても知られています。 彼は1875年から1880年までストックホルムのスウェーデン王立芸術アカデミーで学びました。初期には水彩画の分野で高い評価を受け、その写実的な描写、特に水面の光の表現においては卓越した技量を示しました。 1880年代後半にはパリに滞在し、印象派の影響を受けつつも、独自の表現技法を確立しました。 その後、油彩画も手掛けるようになり、力強く自信に満ちた筆致で、人物の内面や生命力を捉える肖像画家として国際的な成功を収めました。 彼は1896年に故郷であるダーラナ地方ムーラに戻り、地元の人々や民俗文化をテーマにした作品も多く残しています。

被写体ブリューノ・リリエフォッシュについて

この肖像画の被写体であるブリューノ・リリエフォッシュ(1860-1939)もまた、スウェーデンの国民的画家の一人です。 彼は特に野生動物を得意とする画家として知られ、自然の中で生きる動物たちの姿を、まるでスナップ写真のように臨場感あふれる写実的な描写で描き出しました。 彼は「牧歌的」な動物画が主流だった時代に、自然に適応した動物の日常の姿を描くという独自の境地を切り開きました。 リリエフォッシュもまた、1879年から1882年までスウェーデン王立美術院で学んだ後、ドイツやフランスに渡り、フランスではグレ=シュル=ロワンの芸術家村で様々な画家たちと交流し、日本美術からも影響を受けたとされています。

作品「画家ブリューノ・リリエフォッシュ」の背景と意図

アンデシュ・ソーンとブリューノ・リリエフォッシュは、同じ1860年生まれで、スウェーデン美術の黄金期を代表する「ABC」の画家(アンデシュ・ソーン、ブリューノ・リリエフォッシュ、カール・ラーション)として共に評価されていました。 制作年が1906年であるこの作品は、二人の画家が共にスウェーデン美術界の重要な存在として確立していた時期に描かれました。ソーンが同時代の著名な画家であるリリエフォッシュを肖像画として描いたことは、彼らの芸術家としての相互認識と敬意、そして当時のスウェーデン美術界における彼らの中心的な役割を示唆しています。作品は、一人の画家が別の画家の本質を捉えようとする試みであり、芸術家同士の深い精神的なつながりを表現する意図があったと考えられます。

技法と素材

「画家ブリューノ・リリエフォッシュ」は、油彩・カンヴァスで制作されています。 アンデシュ・ソーンの油彩画は、その大胆で奔放な筆致が特徴です。彼は少ない色数で対象の本質を捉え、光と影の劇的なコントラストを用いて人物の存在感を際立たせました。素早い筆運びによって、描かれる人物の動きや表情、そして画家自身の感情までもが画面に宿っているかのような印象を与えます。この作品においても、リリエフォッシュの個性や内面が、ソーン独自の力強い筆致と色彩によって表現されていると推測されます。

作品の持つ意味

この肖像画は、単なる人物の描写に留まらず、スウェーデンの近代美術史において重要な位置を占める二人の巨匠の友情と、それぞれの芸術的アイデンティティの相互理解を象徴しています。ソーンがリリエフォッシュを、その専門分野である動物画家の視点からではなく、一人の人間、一人の芸術家として深く見つめ、その本質を描き出そうとした意味は大きいと言えるでしょう。野生動物を主題とするリリエフォッシュの内省的な側面や、自然と向き合う彼の精神性が、ソーンの巧みな筆致によって表現されている可能性があります。

評価と影響

アンデシュ・ソーンによる「画家ブリューノ・リリエフォッシュ」は、スウェーデンを代表する二人の画家の交流を示す貴重な作品として、美術史的な価値が高いと評価されています。 この作品はスウェーデン国立美術館に所蔵されており、ソーンの肖像画作品の中でも重要な一点として位置づけられています。 同時代の傑出した芸術家をテーマとすることで、ソーンの人間観察の鋭さと表現力の高さを改めて示すとともに、スウェーデン美術の黄金期における芸術家同士の緊密な関係性や、個々の才能が互いに刺激し合い、高め合った様子を後世に伝えています。