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エウシェーン王子

オスカル・ビュルク

スウェーデン絵画の輝かしい一翼を担う画家、オスカル・ビュルクによる作品「エウシェーン王子」は、東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展で紹介されています。

この作品は、スウェーデン王子でありながら、情熱的な画家、美術収集家、そして芸術のパトロンとしても知られるエウシェーン王子(Prins Eugen, 1865-1947)を描いた肖像画です。エウシェーン王子は、当時のスウェーデン国王オスカル2世の四男として生まれ、ドロットニングホルム宮殿で生涯を過ごしました。彼は幼い頃から芸術的な才能を示し、パリで学んだ後、スウェーデンを代表する風景画家の一人となりました。また、同時代の芸術家たちを支援し、自らの邸宅ヴァルデマースウッデとそのコレクションを国に遺贈するなど、スウェーデンの芸術界に多大な影響を与えました。

作者オスカル・ビュルク(Oscar Björck, 1860-1929)は、スウェーデンの著名な画家であり、王立スウェーデン美術アカデミーの教授を務めました。彼は1888年にストックホルムに拠点を構えて以来、肖像画の制作に注力し、国王オスカルを含む多くの重要な人物の肖像を手がけています。エウシェーン王子もまた、ビュルクの描いた主要な主題の一つであり、特に1895年には「イーゼルに向かうエウシェーン王子」(Prins Eugen vid staffliet)と題された作品も制作されています。この作品は、単なる王子の肖像としてだけでなく、芸術家としての王子の姿を捉えようとするビュルクの意図が込められていると考えられます。

技法と素材については、オスカル・ビュルクはアカデミックな絵画教育を受け、パリやミュンヘンでの修行を通じて伝統的な油彩画の技術を習得しました。彼の肖像画は、対象の人物の内面や品格を捉えることに長けており、緻密な描写と色彩の調和を特徴としています。本作品も油彩で描かれており、彼の熟練した筆致と写実的な表現が伺えます。作品の最大寸法は3527 x 2238ピクセル(JPG)と記録されており、これは実寸においてもかなりの大きさを持つ肖像画であったことを示唆しています。

この作品が持つ意味は、スウェーデン王室が芸術を深く理解し、支援していた文化的な背景を象徴しています。エウシェーン王子自身が芸術家であったことから、この肖像画は、公的な役割と個人的な情熱とが融合した一人の人物像を描き出しています。オスカル・ビュルクによって描かれたエウシェーン王子の姿は、彼の芸術家としてのアイデンティティと、スウェーデン文化におけるその重要性を後世に伝える役割を果たしています。

オスカル・ビュルクは、王室や社会の要人を描くことでその名声を確立し、スウェーデン美術界において重要な地位を占めました。彼が手がけたエウシェーン王子の肖像画は、当時のスウェーデンにおける芸術家の地位と、王室と芸術との密接な関係を示す貴重な資料として評価されています。この作品は、エウシェーン王子がスウェーデンの文化遺産に与えた多大な影響と、彼の芸術への献身を視覚的に伝えるものとして、現在も人々に鑑賞されています。