オーディオガイド トップに戻る
0:00
0:00

画家エリーサベット・ケイセル

ミーナ・カールソン=ブレードバリ

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示されるミーナ・カールソン=ブレードバリの作品「画家エリーサベット・ケイセル」をご紹介します。

作品概要

「画家エリーサベット・ケイセル」は、スウェーデンを代表する女性画家ミーナ・カールソン=ブレードバリ(1857-1943)が1893年に制作した油彩画です。この作品は、同時代のスウェーデン人画家であり、カールソン=ブレードバリの友人であり師でもあったエリーサベット・ケイセル(1851-1898)の肖像を描いています。現在、ストックホルムのスウェーデン国立美術館に収蔵されています。

制作背景と意図

ミーナ・カールソン=ブレードバリは、1857年にストックホルムの裕福な家庭に生まれ、10代でケルスティン・カルドンやエリーサベット・ケイセルから絵画の個人レッスンを受けました。 1885年に結婚生活を終え、パリへと渡り、1883年から1887年までアカデミー・ジュリアンでジュール・ルフェーブルやギュスターヴ・ブーランジェに師事し、本格的な美術教育を受けます。 その後、1890年にストックホルムに戻ると、友人でありアカデミー・ジュリアン時代の同窓生でもあったエリーサベット・ケイセルが設立した美術学校で教鞭を執りました。

本作品「画家エリーサベット・ケイセル」は、カールソン=ブレードバリがケイセルの美術学校で教えていた1893年から1895年にかけての時期に制作されました。この時期は、カールソン=ブレードバリ自身の絵画制作が特に活発化した時期とされています。 ピンクのドレスをまとい、緑色の背景の前に立つエリーサベット・ケイセルを描いたこの肖像画は、当時の女性芸術家たちが、新たな職業的アイデンティティと仲間意識を示すために、お互いを描いた多くの作品の一つとして位置づけられます。 これは、彼女たちが自らの存在と役割を美術界において確立しようとした時代の精神を反映しています。

技法と素材

この作品は油彩画であり、キャンバスに油絵具を用いて描かれています。 カールソン=ブレードバリは肖像画や日常の情景を描くことで知られており、フランスでレアリスムや自然主義を学んだ後、スウェーデンに帰国してからは、叙情的で親密な表現を重視した独自のスタイルを確立しました。 彼女は、イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動や、イギリス印象派、ジェームズ・マクニール・ホイッスラーの絵画からも強い影響を受けたとされています。

作品の持つ意味と評価

肖像画のモデルであるエリーサベット・ケイセル(1851-1898)もまた、スウェーデンの重要な画家です。彼女は1874年から1878年までスウェーデン王立美術院で学び、1878年から1889年までパリでレオン・ボナやギュスターヴ=クロード=エティエンヌ・クルトワに師事しました。 1880年代を通じてパリのサロンに出品し、スウェーデン人女性として唯一の栄誉賞を受賞するなど、高い評価を得ました。 ケイセルは主に肖像画を手がけ、スウェーデンの印象派の一人とも見なされています。

「画家エリーサベット・ケイセル」は、単なる個人肖像画に留まらず、当時のスウェーデンにおける女性芸術家たちの連帯と、美術界における彼女たちの存在感を象徴する作品と言えます。ケイセルはカールソン=ブレードバリの師であり、後にカールソン=ブレードバリはケイセルの美術学校で教えるなど、二人の間には深い交流がありました。この作品は、そのような個人的な関係性と、女性芸術家としてのプロフェッショナリズムが交差する点で、特に重要な意味を持っています。

本作品は、スウェーデン国立美術館に所蔵されており、そのコレクションにおける位置づけは、作品の芸術的価値と歴史的意義が認められていることを示しています。 また、今回の東京都美術館開館100周年記念展「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」にて選定されたことは、19世紀末から20世紀初頭にかけてのスウェーデン美術の「黄金期」を代表する作品の一つとして、その魅力と重要性が国際的にも再評価されている証と言えるでしょう。