アンデシュ・ソーン
東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示されるアンデシュ・ソーンの油彩画《編物をするダーラナの少女コール=マルギット》について紹介します。
アンデシュ・ソーン(1860-1920)は、スウェーデン北部ダーラナ地方のムーラで生まれ、ストックホルムのスウェーデン王立芸術アカデミーで学んだ後、イギリス、フランス、アメリカなど海外で広く活躍し、国際的な名声を得た画家です。彼は「スウェーデン印象派」とも称され、写実主義と印象主義を融合させた独自のスタイルを確立しました。1896年に故郷ムーラに戻ってからは、自身のルーツであるダーラナ地方の風土や人々を題材とした作品を多く手掛けるようになります。
本作品《編物をするダーラナの少女コール=マルギット》は、1901年に制作されました。ソーンは、日常生活の中にある輝きや身近な人々の姿を親密かつ情緒豊かに描き出すことを得意とし、この作品もまた、彼の故郷であるダーラナ地方の女性、コール=マルギットが編み物をする静かな情景を捉えています。 印象派の画家たちの間では、編み物や読書をする人物像は人気のテーマであり、ソーンもまた、日常の何気ない行為にひそむ美しさや、人々の内面的な世界を描き出そうとしました。
この作品は油彩画であり、カンヴァスに油絵具で描かれています。 ソーンの絵画技法は、大胆で自由な筆致と、正確なデッサン、明暗、そしてエッジの巧みな使い方が特徴です。 近くで見ると筆致は広く大まかに見えますが、全体としては驚くほど写実的に見えます。 彼は「ゾルン・パレット」と呼ばれる限定された色数(赤、イエローオーカー、黒、白)を用いることで知られ、これらの色を巧みに操り、光と色彩の輝きを表現しました。 本作においても、温かい光と影、洗練されたグレーの色調、そして反射光への優れた理解がうかがえます。 ソーンは、素早くかつ意図的に筆を動かし、一筆ごとに意味を持たせるような描き方をしたと言われています。
《編物をするダーラナの少女コール=マルギット》は、日常のささやかな営みの中に宿る静けさや、人間の本質的な美しさを捉えています。編み物に集中するコール=マルギットの姿は、観る者に穏やかな気持ちをもたらし、素朴でつつましい生活の中に存在する豊かさを感じさせます。 画面には日常的な器やコップ、瓶などが配され、静かで落ち着いた雰囲気を作り出しています。 この作品は、自然と共に生きる北欧ならではの感性、そしてスウェーデンのアイデンティティを象徴する芸術の一例として位置づけられます。
アンデシュ・ソーンの作品は、その時代を超えた魅力によって今日でも高く評価されています。 《編物をするダーラナの少女コール=マルギット》は、20世紀のスウェーデンにおいて最も有名で、最も多く複製された絵画の一つとして知られています。 彼の人間経験の本質を捉える能力は、現代の美術愛好家にも共感を呼び続けています。 本作品を含むソーンの絵画は、現在も多くの美術館に所蔵され、その遺産は美術史の中で生き続けています。
東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展は、スウェーデン美術の黄金期とされる19世紀末から20世紀初頭にかけての魅力的な絵画を紹介するもので、本作品を通して、北欧の光と日常の輝きという展覧会のテーマを深く感じ取ることができます。