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陽光

ファンニ・ブラーテ

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示されるファンニ・ブラーテの油彩画「陽光」は、スウェーデンにおける19世紀末から20世紀初頭の美術の特質を伝える作品です。

この作品は、1898年に制作されました。原題はスウェーデン語で「Skuggspel」(影絵、影芝居)または「Solsken」(陽光)とされており、英語では「Sunshine」として知られています。現在はスウェーデン国立美術館に所蔵されています。

ファンニ・ブラーテは1861年にストックホルムの恵まれた家庭に生まれ、スウェーデンの画家として活躍しました。コンストファックを卒業後、1880年にスウェーデン王立美術院に入学し、1885年にはロイヤルメダルを受賞しています。1887年には奨学金を得てパリのアカデミー・コラロッシで学びました。同年、ルーン文字研究者のエリック・ブラーテと結婚し、4人の娘を育てました。結婚後は専門的な画家としての活動は制限されましたが、1891年にはスウェーデン芸術家協会の会員となり、美術界との関わりを続けました。彼女はまた、児童書の挿絵も手がけています。

ブラーテの芸術様式は、特に家庭的な生活や室内を描いたジャンル絵画に特化していました。彼女のスタイルは時間とともに進化し、油彩と水彩の両方を用い、繊細な筆致と緻密な写実主義を融合させました。彼女の作品は、妻として、また母としての自身の価値観を反映し、家庭の穏やかな情景に温かさと愛情を深く込めて表現しています。パリでの留学経験は彼女の画風に影響を与え、20世紀に入る頃には印象派のスタイルを取り入れています。彼女の描く室内は、しばしば明るい色彩、薄いカーテン、そして簡素な古風な家具が特徴です。

「陽光」は、まさにそうしたブラーテの作風を象徴する一枚です。この作品は、陽の光が差し込む室内の様子を描いており、その光は「昼下がりの光、とろける午後」と評されるような、暖かく心地よい雰囲気を生み出しています。 特に、ソファの赤色が、その質感と陽の明るさを巧みに表現している点も注目されます。 彼女の描くこのような作品は、田園と家庭における理想化された生活の視点を映し出しています。

ブラーテの作品は、スウェーデン美術史において重要な位置を占めており、特にカール・ラーションの芸術的な視覚に大きな影響を与えたとされています。ラーションは、彼女の技法や構図の感覚を意識的に取り入れたことで知られています。ブラーテは、家庭の穏やかさという理想の象徴となり、その遺産は今日まで多くの人々に感銘を与え続けています。1943年には、彼女の生涯にわたる功績を記念する回顧展が開催され、126点もの作品が展示されました。

本展「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」では、19世紀末から20世紀にかけてのスウェーデンで生み出された魅力的な絵画を通じて、自然と共に豊かに生きる北欧ならではの感性に迫ります。 「陽光」は、この展覧会のテーマである「日常のかがやき」を親密で情緒豊かな表現で描き出し、まさに北欧の光とその生活を体現する作品として、来場者に温かい感動を与えることでしょう。