オーディオガイド トップに戻る
0:00
0:00

カードゲームの支度

カール・ラーション

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示されるカール・ラーションの作品《カードゲームの支度》についてご紹介します。

カール・ラーション《カードゲームの支度》

制作背景と意図

本作品《カードゲームの支度》(原題:Getting Ready for a Game / Till en lite vira)は、1901年にスウェーデンの画家カール・ラーションによって制作されました。ラーションは19世紀のスウェーデンの画家で、リアリズムとアーツ・アンド・クラフツ運動に関連付けられています。彼は妻カーリンと8人の子供たちとの平穏な家庭生活を、水彩画で描いた作品で特に知られています。彼の自伝によると、自宅の様子を絵に描くというアイデアは妻カーリンからもたらされました。本作品は、1902年に出版された彼の著作『ラーション家』(または『わたしの家』)のために描かれた一枚です。この本をはじめとするラーション家の暮らしを描いた作品集は、大きな成功を収め、その絵は数え切れないほどの複製となって広く普及しました。

作品の描写

絵画は、冬の寒さが厳しい外の様子とは対照的に、暖炉のあるラーション家のダイニングルームで、家族がスウェーデンで19世紀に広く流行したカードゲーム「ヴィーラ」の準備をしている情景を描いています。 ラーション自身が「屋外は本当にひどい。風が家の継ぎ目から吹き荒れ、雪は鋭い針のように目に入ってくる…まさに『ヴィーラ』のゲームにうってつけの時だ。ここには心地よい飲み物と必需品が詰まった盆があり、カーリンはまだ最後の飾り付け、棚から修道院のリキュールを取るところが終わっていない。背景には、私が自分で整えた祭壇そのもの、カードテーブルがある。」と記述しています。 妻のカーリンが酒とグラスを準備し、娘のブリッタとチャシュティはすでにテーブルの端に座って、家族の団らんのひとときを待つ様子が丁寧に描き出されています。

技法と素材

本作は油彩、カンヴァスに描かれたもので、縦68センチメートル、横92センチメートルの大きさです。 ラーションの作風は、リアリズム、アーツ・アンド・クラフツ運動、そしてアール・ヌーヴォー様式と関連付けられています。 彼の作品は、シャープな線と淡く優しい色調で室内を細やかに表現しており、木の温もりが伝わる家具や調度品、オイルランプとろうそくの柔らかな光などが丁寧に描き込まれています。

作品が持つ意味と評価

《カードゲームの支度》は、ラーションが理想とした家庭の温かさ、調和、そしてスウェーデンの冬の日常の幸福感を象徴しています。 彼の作品に描かれたスンドボーンの家は、多くの人々にとって「スウェーデンらしさの典型」と見なされるほど、その国の文化と暮らしの象徴となりました。 ラーションと妻カーリンは、アーツ・アンド・クラフツ運動の思想に影響を受け、家具や日用品を自らデザインし制作するなど、芸術と日常生活を融合させた「総合芸術作品(Gesamtkunstwerk)」としての家を築き上げました。 カーリンの芸術的センスは、色彩豊かなテキスタイルや手描きの家具など、彼らの特徴的なインテリアデザインに強く表れています。

ラーションは、アンデシュ・ソーン、ブリューノ・リリエフォッシュと共に「スウェーデン画家のABC」と称されるスウェーデン近代絵画を代表する3人の画家の一人として、母国で絶大な人気を誇りました。 彼の作品は、当時のスウェーデンで流行していた「ドイツ様式」の重厚な室内装飾に対抗する、より機能的で美しい家庭環境のモデルとして、評論家エレン・ケイによって高く評価され、広く影響を与えました。 ラーションの、日常の美しさを捉える卓越した能力と独特の芸術様式は、今日に至るまで世界中の鑑賞者を魅了し続けています。 彼が描いた家族の家は、現在も美術館として保存されており、その世界観を体験することができます。