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リンチュービングの庭

ヨーハン=フレードリック・クルテーン

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」では、ヨーハン=フレードリック・クルテーンによる油彩画「リンチュービングの庭」が展示されています。本展は、スウェーデン国立美術館の全面協力のもと、19世紀末から20世紀初頭のスウェーデン絵画の黄金期をたどる日本初の展覧会であり、北欧の地で育まれた独自の美の世界を紹介するものです。

ヨーハン=フレードリック・クルテーン(1858-1932)は、1880年代にスウェーデン美術界で台頭した世代の画家の一人です。彼はストックホルムのスウェーデン王立美術院で学び、素描、肖像画、風景画を修めました。また、形式的な指導に懐疑的で自然な描写を奨励した画家、エドヴァルド・ペルセウスからも指導を受けています。クルテーンは、伝統的なアカデミーの様式から離れ、写実主義と理想主義へと転じました。1880年代のフランスで学ばれた戸外制作(プレイン・エア・ペインティング)の技法を追求し、細部への綿密な注意と、全体的な雰囲気の表現に長けていました。

作品「リンチュービングの庭」は1887年から1888年にかけて制作された油彩画です。この作品は、画家の初期の、そして最も充実していた時期のものです。カンヴァスに油彩で描かれたこの絵には、リンチューピングの庭で過ごす若きエルンスト・ボーマン医師とその家族(メヒティルド・ボーマン、グードルン・サルモンソン)の姿が描かれています。人物は優雅な服装をしていますが、そのポーズや、さりげなく置かれた庭の家具が、作品全体にリラックスした非公式な雰囲気を与えています。

この作品は、当時のスウェーデンのブルジョワジーの日常を垣間見せるものであり、クルテーンがフランスで習得した写実主義と戸外制作の技法を駆使して、光と大気の移ろいを捉えようとした意図が読み取れます。画家は多くの同時代人とは異なり、若い頃にフランスで長い時間を過ごすことはありませんでしたが、フランスに端を発する写実主義の潮流を積極的に取り入れました。

「リンチュービングの庭」は、クルテーンが後にリンゴの木が咲き誇る風景や赤い木造家屋の描写で知られるようになる前の、初期の重要な作品として評価されています。この絵は2011年にスウェーデン国立美術館に購入され、同美術館がこれまでクルテーンの作品を一点しか所蔵していなかったため、画家の代表的な時期の作品として貴重な追加となりました。本展を通じて、スウェーデンの近代絵画におけるクルテーンの貢献、特に日常の風景の中に美を見出す彼の視点と、それを精緻な筆致で表現する技法が改めて紹介されています。