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レース編み

イエーオリ・パウリ

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示されている、イエーオリ・パウリによる作品「レース編み」についてご紹介します。

作品名:レース編み(The Lace-Maker)

作家名:イエーオリ・パウリ

制作年:1885年

技法・素材:油彩、カンヴァス

所蔵:スウェーデン国立美術館

作品の背景、経緯、意図

本作品「レース編み」は、スウェーデンの画家イエーオリ・パウリによって1885年に制作されました。パウリ(1855-1935)は、肖像画や人物画で知られるスウェーデンの画家です。彼は、スウェーデン王立美術院の教育方法に異を唱えた芸術家グループ「オポーネンテルナ」の一員でもありました。

1880年頃、多くのスウェーデンの若い芸術家たちはフランスに留学し、人間や自然をありのままに表現するレアリスム(写実主義)に傾倒しました。彼らはやがて帰国後、自国のアイデンティティを示すべく、スウェーデンらしい芸術の創造を目指し、自然や身近な人々、あるいは日常に潜む輝きを親密で情緒豊かな表現で描き出しました。

「レース編み」は、こうした時代の潮流の中で、日常の情景を写実的に捉えようとする意図のもと制作されました。この作品は、レースを制作する女性の姿を描写しており、手仕事の繊細な工程や、それに打ち込む職人の集中と献身を表現しています。

技法や素材

この作品は、油彩、カンヴァス(油絵具とキャンバス)を用いて描かれています。サイズは縦55cm、横46cmです。パウリは、レース編みという緻密な手作業を表現するために、細部にわたる描写を施しています。

作品の意味

「レース編み」は、当時のスウェーデンにおける日常の労働や、手仕事に携わる人々の姿に光を当てています。働く女性の姿を通して、日々の生活の中に存在する尊厳や、ささやかな美しさを見出す視点が示されています。本展覧会のタイトルである「北欧の光、日常のかがやき」が示すように、自然豊かな北欧の地で育まれた感性、そして日常の中に息づく輝きへの温かいまなざしが、この作品からも読み取ることができます。

評価や影響

イエーオリ・パウリは、19世紀末から20世紀初頭にかけてのスウェーデン美術における重要な画家の一人です。彼の作品は、この時期のスウェーデン美術が、フランスで学んだレアリスムや自然主義の技法を取り入れつつ、自国の風土や人々の生活に根差した独自の表現を追求した「黄金期」の一端を担うものと位置付けられます。特定の作品としての「レース編み」に対する具体的な評価は多くありませんが、日常の情景を写実的に描いたこの作品は、当時のスウェーデンの芸術家たちが目指した、身近な題材から普遍的な美を見出すという精神を体現しています。現在、この作品はスウェーデン国立美術館に所蔵されており、その芸術的価値が認められています。