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車窓の女性

アンナ・ノードグレーン

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示されるアンナ・ノードグレーン作「車窓の女性」は、1877年に描かれた油彩作品です。本作品は高さ89cm、幅61cmのカンヴァスに描かれ、ストックホルム国立美術館に所蔵されています。

作者であるアンナ・ノードグレーンは、1847年にスウェーデンのマリエスタードに生まれ、1916年にその生涯を閉じました。 彼女は1865年にストックホルムのスロイドスクーランで学びを始め、1867年にはスウェーデン王立美術アカデミーに入学し、初期の女性学生の一人となりました。 1874年にはパリへ渡り、アカデミー・ジュリアンで学びを深め、肖像画家シャルル・エミール・オーギュスト・デュラン(カロリュス=デュラン)のもとでもレッスンを受けています。

ノードグレーンは肖像画と風俗画を専門とし、その作品は主にアカデミック様式を基調としています。 彼女は印象派には傾倒しなかったとされながらも、パリ滞在中にはジュール・バスティアン=ルパージュの影響を受けています。 パリで約8年間活動した後、約20年間ロンドンを拠点に活動し、貧しい人々の日常生活を写実的に描いた作品で評価を得ました。 1885年から1902年にかけては、200以上の展覧会に出品するなど、精力的に制作活動を行いました。

「車窓の女性」は、ノードグレーンがパリで学んでいた時期に制作された作品です。この絵は、列車が発車する感動的な瞬間を捉え、窓の外を眺める若い女性の姿を描いています。 編み込まれた髪と優雅な帽子が、彼女の穏やかな表情を際立たせています。 本作品は、旅立ちの情景と共に、愛、憧れ、そして日常の中にひそむ美しさといった普遍的なテーマを静かな思索の中に表現しており、見る者に語りかけるような叙情性を帯びています。

この作品に用いられている技法は油彩であり、カンヴァスに描かれることで、深みのある色彩と繊細な光の表現が実現されています。 ノードグレーンの卓越した写実的な描写力により、女性の表情や旅の情景が緻密に描き出されています。

「車窓の女性」は、東京都美術館開館100周年記念展のテーマである「北欧の光、日常のかがやき」を象徴する作品の一つとして展示されます。この展覧会は、スウェーデン美術の黄金期における画家たちが、フランスで学んだレアリスムや自然主義から離れ、自国のアイデンティティと感情、叙情性を重視した独自の表現を追求した軌跡を紹介するものです。 「車窓の女性」は、その普遍的な美しさと、旅や内省といったテーマを通じて、スウェーデン美術が持つ感性と日常への温かなまなざしを伝えています。