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ストックホルム群島で読書する女性

エリーサベット・ヴァーリング

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示されるエリーサベット・ヴァーリングの作品「ストックホルム群島で読書する女性」を紹介します。

作品概要

エリーサベット・ヴァーリング(Elisabeth Warling, 1858-1915)による「ストックホルム群島で読書する女性(A Woman Reading in the Archipelago)」は、1890年頃に制作された油彩画です。本作は、オーク材の板に油絵具で描かれており、パネルの寸法は縦38.8cm、横33.2cm、厚さ0.8cmです。現在、ストックホルムのスウェーデン国立美術館に所蔵されており、2020年にヘッダ&N.D.クヴィスト基金によって購入されました。

背景・経緯・意図

エリーサベット・ヴァーリングは、1858年にスウェーデンに生まれ、1915年に亡くなったスウェーデンの画家です。彼女はストックホルムの技術学校(1875-1877年)と王立美術アカデミー(1877-1883年)で学び、その後1885年からはパリのアカデミー・コラロッシで研鑽を積みました。アカデミー・コラロッシでは、美術アカデミーからの奨学金を得て留学しています。

ヴァーリングの作品は、主に風俗画や肖像画が中心であり、油彩、グワッシュ、水彩、鉛筆画など多様な技法を用いていました。彼女は当時の流行に沿った風俗画や肖像画を得意とし、特に子どもをモデルにすることが多かったとされています。また、女性や子どもの肖像画を調和の取れた色彩で描いたことで知られています。

本作「ストックホルム群島で読書する女性」は、19世紀末のスウェーデン美術の潮流の中で制作されました。この時期、多くの若いスウェーデン人芸術家たちはフランスでレアリスムや自然主義を学んだ後、故郷スウェーデンへと戻り、自国のアイデンティティを表現する芸術の創造を目指しました。彼らは、自然や身近な人々、そして日常の中に潜む輝きを、親密で情緒豊かな表現で描き出しました。本作品もまた、スウェーデンの自然豊かな「群島」を舞台に、人々の「日常」の一コマである「読書」する女性を描くことで、この時代のスウェーデン絵画が追求したテーマ、すなわち「北欧の光、日常のかがやき」という主題に深く関連していると考えられます。

技法や素材

この作品は、オーク材の板に油絵具を用いて描かれています。板を支持体として用いることで、キャンバスとは異なる堅牢な画面と、油絵具の緻密な描写が実現されています。ヴァーリングは色彩感覚に優れていたと評価されており、本作においてもその色彩の洗練された感覚が活かされていると推測されます。

意味合い

「ストックホルム群島で読書する女性」は、スウェーデンの豊かな自然の中で過ごす人々の、穏やかで内省的な日常を描いています。読書する女性の姿は、当時の市民生活における文化的な活動、特に女性の知的な生活の一側面を象徴しているとも解釈できます。群島という具体的な場所を設定することで、スウェーデン固有の風景とそこに息づく人々の生活が一体となって表現されています。本作は、外光派的な表現を通じて、北欧特有の繊細な光と、その光がもたらす日常の輝きを描き出し、観る者に安らぎと共感を与えます。

評価と影響

エリーサベット・ヴァーリングは、生前には広く名を馳せることはありませんでしたが、その肖像画や一部の風俗画は注目を集めました。彼女の作品はスウェーデン国立美術館をはじめ、複数の美術館や大学に収蔵されています。今回、東京都美術館の開館100周年記念展という大規模な国際展で紹介されることは、ヴァーリングの作品、特に「ストックホルム群島で読書する女性」が、スウェーデン近代絵画史における重要な位置を占める作品として再評価されていることを示しています。この作品は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのスウェーデン美術が追求した、自然と日常への温かい眼差し、そして固有の美意識を伝える貴重な事例として、多くの人々に影響を与えています。