ヒューゴ・ビリエル
東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示されるヒューゴ・ビリエルの油彩画《モンマルトルの小道》は、19世紀末のパリにおけるスウェーデン人画家の息吹を感じさせる作品です。
本作は、スウェーデン人画家ヒューゴ・ビリエル(1854-1887)が1881年に制作したものです。ビリエルは1870年から1877年までスウェーデン王立美術院で学び、1877年にパリへと渡りました。彼は1878年の夏をバルビゾンでカール・ラーションらと共に過ごした後、パリのモンマルトルにあるガブリエル通りでエルンスト・ヨーセフソンとアトリエを共有していました。作品に描かれた小道は、このガブリエル通りに隣接していたと考えられています。この特定の光景は、当時多くのスウェーデン人画家によって描かれ、パリでの日常生活のささやかな断片として、画家自身の記念品であると同時に、コレクターにも高く評価されました。
《モンマルトルの小道》は、板に油彩で描かれています。 ビリエルの芸術様式は印象派に分類され、彼は技術の達人であり、優れた主題画家として知られていました。 この作品では、木々の葉を通して濾過された光が、壁や地面にちらちらと揺らめく様子を捉えることに画家が注力しています。 小道の奥行きや、枝葉と壁や道における筆致の違いが印象的な、「暖かく優しい風景」として評価されています。
この絵画は、モンマルトルの日常的な情景を切り取っており、画家が光と雰囲気を捉えることに集中した様子を示しています。当時のスウェーデン人画家たちが、異国パリでの生活の中で見出した美や、都市のささやかな風景に対する関心をうかがい知ることができます。画家たちが自身のアトリエやその周辺で何を見て、何を感じていたのかという、個人的な視点が作品に込められています。
ヒューゴ・ビリエルは1879年には「ガブリエル通り」、1880年には「化粧室」でパリのサロンにデビューし、同時代の関心を呼びました。 彼の作品は常に「フランスのサロン絵画に準ずる」伝統的なスタイルを持ち、一般大衆に受け入れられやすいものでした。 《モンマルトルの小道》は、現在スウェーデン国立美術館に収蔵されており、当時のスウェーデン人画家がパリでどのような主題を描いていたかを示す貴重な一例となっています。
本展覧会「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」は、スウェーデン国立美術館の全面協力のもと、19世紀末から20世紀にかけてのスウェーデン美術の黄金期をたどる日本初の展覧会であり、ビリエルの《モンマルトルの小道》は、「パリをめざして̶フランス近代絵画との出合い」と題されたセクションに展示されています。 この作品を通して、来場者は北欧の画家が捉えたパリの光と日常の一コマを体験することができます。