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夏の風景

エードヴァッド・バリ

東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」にて展示されているエードヴァッド・バリの作品「夏の風景」についてご紹介します。

作品名:夏の風景 (Summer Landscape)

アーティスト名:エードヴァッド・バリ

作品の背景・経緯・意図 エードヴァッド・バリによる「夏の風景」は、1873年に制作された油彩画であり、スウェーデン国立美術館が所蔵する作品です。この作品は、19世紀末から20世紀にかけてのスウェーデン絵画の展開をたどる本展において、スウェーデン近代絵画の夜明けを示す一章を飾るものとして展示されています。当時のスウェーデンの若い世代の芸術家たちは、フランスやドイツで新しい芸術様式を学んでいました。バリもまた、ドイツのデュッセルドルフでロマン主義的な風景画を学んだ画家の一人です。デュッセルドルフ派では、荒々しくも崇高な自然の姿を描く画風が好まれました。しかし、彼は帰国後、次第に祖国スウェーデンの湖水地方に見られるような穏やかな自然へと題材を移していきます。この「夏の風景」は、まさにそうした自国の自然、特に夏の情景をありのままに捉えようとする画家のまなざしが反映された作品です。その意図は、スウェーデン独自のアイデンティティを、身近な自然の中に発見し表現することにあったと考えられます。

技法や素材 「夏の風景」は、油彩、カンヴァスの技法で描かれています。油彩は、顔料を油で練り合わせた絵具を使用し、カンヴァス(麻や綿の布地)に描く伝統的な絵画技法です。油絵具は乾燥に時間がかかるため、色を重ねて深みを出したり、混色して微妙な色合いを表現したりすることが可能です。また、筆のタッチを活かした表現や、光の描写における豊かな諧調を可能にし、作品に奥行きと質感を与えています。

作品が持つ意味 この作品は、スウェーデン独自の自然観と、それに根差した日常への温かなまなざしを象徴しています。当時のスウェーデンの画家たちが、フランスで学んだレアリスムや自然主義から離れ、自身の感情や叙情的な雰囲気を重視した独自の表現方法を模索していた中で、バリの「夏の風景」は、自国の厳しくも豊かな自然の中に美を見出す、北欧ならではの感性を具体的に示しています。それは、自然とともに豊かに生きるウェルビーイングな暮らしのルーツを、視覚的に表現したものです。

評価や影響 エードヴァッド・バリの「夏の風景」は、19世紀末から20世紀初頭にかけての「スウェーデン美術の黄金期」における重要な作品の一つとして評価されています。彼の作品は、後に続く若い世代の画家たちが、スウェーデンの土地に根ざした独自の芸術を創造する上で、方向性を示したと言えます。特に、都市の喧騒から離れた故郷の穏やかな風景を描くことで、スウェーデンの国民的アイデンティティを形成する上で大きな影響を与えました。本展を通じて、スウェーデン絵画が近年、国外でも大規模な展覧会が開催され、世界的に注目を集める中で、この作品も改めてその価値が認識されています。