ニルス・ブロメール
東京都美術館開館100周年記念「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展にて展示されるニルス・ブロメールの作品「草原の妖精たち」は、19世紀半ばのスウェーデン美術において、国民的な芸術を創造しようとする画家たちの意図が色濃く反映された作品です。
作品の背景・経緯・意図 ニルス・ブロメール(Nils Blommér, 1816-1853)は、19世紀のスウェーデンで、北欧神話や民間伝承を主題とした作品を通じて、スウェーデン独自の芸術を確立しようとした画家の一人です。彼は自然には固有の魂が宿ると強く信じ、それを民話の登場人物によって象徴しました。本作品「草原の妖精たち」は、もともと四季を表現する連作として構想されており、その中で春を象徴するものとして描かれました。作品の構想にあたっては、ドイツの画家モーリッツ・フォン・シュヴィントなど、妖精や自然の精霊を頻繁に描いた画家の影響を受けています。
技法や素材 本作品は1850年に油彩でカンヴァスに描かれました。サイズは縦115cm、横143cmです。 ブロメールは、現実の風景の中に幻想的な要素を融合させることで、夢のようなロマンティックな情景を創り出しています。
作品が持つ意味 作品「草原の妖精たち」には、夕暮れの草原で輪になって踊る妖精たちが描かれています。彼女たちは薄い衣をまとい、宙に浮いているように見えます。 ロマンティックな風景の背景には、スウェーデンのグリップスホルム城が小さく描かれており、この情景がスウェーデンであることを示唆しています。 スウェーデンの民間伝承において、妖精は自然の中に住む美しい若い女性として描かれることが多い一方で、気まぐれで、敬意を払わなければ危険な存在にもなり得るとされています。 この作品は、現実と虚構が入り混じる幻想的な世界観を通じて、北欧文化における自然と神話の強いつながりを示唆しています。
評価や影響 ニルス・ブロメールは、スウェーデン固有の民間伝承や自然に焦点を当てた作品群を通じて、国民的なスウェーデン美術の発展に貢献しました。彼の最もよく知られた作品の多くは、北欧神話と民間伝承に基づいています。 ブロメールは1853年にイタリアで肺炎のため36歳(または37歳)の若さで亡くなりましたが、彼の作品はスウェーデン国立美術館などに収蔵され、後の世代の芸術家にも影響を与えました。 本作は、スウェーデン近代絵画の夜明けを告げる作品の一つとして、その後のスウェーデン美術の流れを予感させる重要な位置を占めています。