エルネスト・クォスト Ernest Quost
オルセー美術館所蔵「印象派―室内をめぐる物語」展に展示されているエルネスト・クォストの油彩画「バラ」は、印象派の画家たちの新たな一面を示す重要な作品です。
エルネスト・クォスト(1842-1931年)はフランスの印象派画家であり、都市の風景、静物、そして特に花を描くことで知られています。クロード・モネはクォストの花の絵を高く評価し、フィンセント・ファン・ゴッホもまた、弟テオへの手紙で彼の花を描く技量に言及するほどでした。
本作品「バラ」(1909-1916年)は、1909年にフランス国家によって注文され、パリの官庁である芸術省の次官室を飾るための装飾パネルとして制作されました。1916年に納入されたこの絵画は、個人の邸宅や公共空間の室内を彩るための装飾品として、印象派の画家たちが果たした役割を示すものと言えます。この制作背景は、本展覧会のテーマである「室内をめぐる物語」と深く関連しており、印象派が単に戸外の光を捉えるだけでなく、室内空間にも深い関心を寄せていたことを示しています。
「バラ」は油彩によってカンヴァスに描かれた作品です。クォストは、バラの花々が画面いっぱいに咲き誇る様子を、奥行きを感じさせる独特の技法で表現しています。手前の白いバラを際立たせるために、後方のバラは意図的にぼかして描かれており、この写真のような遠近感の表現は彼の作品の特徴の一つです。
この作品は縦長のカンヴァスに描かれた二枚組の絵画として展示されることが多く、日本の掛け軸を思わせる対作品として鑑賞されることもあります。それぞれ微妙に大きさが異なるものの、一方は高く伸びる白、赤、黄色のバラを、もう一方は白、赤、ピンクのバラの植え込みを俯瞰し、その中を散策する数人の人物を描いています。どちらの作品も、曇り空から薄日が差し込み、バラが光に映える情景が描かれています。
クォストの「バラ」は、その装飾性と花の描写の巧みさにおいて、彼の代表的な花卉画として位置づけられます。印象派の画家としては珍しく、アトリエで多くのスケッチを基に制作を行うスタイルで、自然の記憶を心に留め、それを再構築して作品を創造するという彼の制作理念が反映されています。
この作品はオルセー美術館に所蔵されており、今回の展覧会「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」においても注目されています。展覧会の来場者からは、「奥に吸い込まれそうな絵画」と評されるなど、その奥行きのある表現と、花々の生命力に満ちた美しさが、鑑賞者に強い印象を与えています。 「室内をめぐる物語」というテーマの中で、本作品は、単なる写実的な花の描写を超え、室内空間に豊かさと美しさをもたらす装飾芸術としての花の絵画の可能性を提示しています。