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「セルヴィス・ランベール=ルソー」より平皿 バッタ Plate with Grasshopper from the "Lambert-Rousseau" Service

アンリ・ランベール(絵付) ウジェーヌ・ルソー(企画販売) Henri Lambert (decorator) Eugène Rousseau (produced by)

本記事では、オルセー美術館所蔵「印象派―室内をめぐる物語」展に展示されている、アンリ・ランベール(絵付)とウジェーヌ・ルソー(企画販売)による「セルヴィス・ランベール=ルソー」より平皿「バッタ」について紹介します。

作品の背景と制作意図

この「セルヴィス・ランベール=ルソー」は、19世紀後半のフランス美術界を席巻したジャポニスムの重要な例として位置づけられます。陶磁器商であり製作者でもあったウジェーヌ・ルソーは、1866年頃から日本美術に着想を得た作品を企画・販売した先駆者として知られています。特に浮世絵、とりわけ葛飾北斎の作品に影響を受け、その図柄を陶磁器に取り入れることを発案しました。

本作品が属する「セルヴィス・ランベール=ルソー」は、ルソーと、セーヴル国立製陶所の装飾画家であったアンリ・ランベールとの共同制作により生まれました。ランベールはこれらの皿の絵柄を考案・絵付けを担当しています。制作時期は、作品モデルが1873年頃とされており、多くは1873年から1875年の間に作られましたが、本作品は「1884年以後」とされています。ルソーが企画したテーブルウェアは1930年代初頭まで継続的に製造され、成功を収めました。

「セルヴィス・ルソー」には大量生産品も存在しましたが、「セルヴィス・ランベール」は一点一点手描きで制作された高級品であり、現存する数が少ない希少な作品群です。その洗練された絵付けは、実際に食器として使用することをためらわせるほどであると評されることもあります。

技法と素材

本作品は「陶器(精ファイアンス)」に「釉下彩」という技法を用いて制作されています。精ファイアンス(ファイアンス・フィーヌ)は、18世紀後半にイギリスのクリームウェアの影響を受けてフランスで発展した陶器の一種です。従来のファイアンスよりも素地が白く、薄く軽量で、磁器に近い白さを持つのが特徴であり、透明な鉛釉がかけられることがありました。

釉下彩は、成形された素焼きの胎(素地)に直接顔料で文様を描き、その上から無色透明の釉薬をかけて高温で焼成する技法です。この技法により、絵付けされた文様は釉薬の層によって保護され、色が褪せることなく、耐酸性、耐アルカリ性、耐摩耗性に優れ、鉛の毒性がないという利点があります。

皿の裏面には、アンリ・ランベールのモノグラム「HL」が赤色で描かれ、さらに製造元であるクレイユ・エ・モントロー製陶所とルブフ・ミリエ社(またはルブフ社)の黒い印が釉下で刻印されています。

作品が持つ意味

本作品に見られる「バッタ」をはじめとする動植物のモチーフは、日本の浮世絵や北斎漫画から直接的な影響を受けています。これらのモチーフを、従来の西洋陶磁器のデザインとは異なる、非対称で斬新な構図で配置することで、日本の美意識をフランスの食卓に取り入れようとする意図が込められています。絵画的な表現が強く、単なる食器としてだけでなく、鑑賞の対象としても価値を持つ作品として制作されました。一部の皿では、魚の頭が皿の表面に、胴体が裏面に描かれるなど、ユニークな表現も見られます。

評価と影響

「セルヴィス・ランベール=ルソー」は、フランス陶磁器におけるジャポニスムの最も初期かつ重要な事例の一つとして高く評価されています。ウジェーヌ・ルソーの事業は1866年の創業以来、成功を収め、その需要は1930年代初頭まで続きました。

本作品を含む「セルヴィス・ランベール=ルソー」の作品群は、オルセー美術館に多く所蔵されており、19世紀フランスにおけるジャポニスムを検証する上で不可欠なコレクションとして積極的に収集が進められてきました。これらは、2008年に開催された「フランスが夢見た日本―陶器に写した北斎、広重」展(東京国立博物館、オルセー美術館共同企画)や「Japanomania in the North」展など、ジャポニスムに焦点を当てた重要な展覧会で展示されてきました。

現在開催中の「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展においても、この平皿「バッタ」が展示されており、19世紀後半の室内装飾や芸術におけるジャポニスムの影響を示す貴重な作品として、その歴史的・美術的価値が再認識されています。