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アルベール・バルトロメ夫人のドレス Madame Albert Bartholomé's Dress

アルベール・バルトロメ Albert Bartholomé

オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語より:アルベール・バルトロメ夫人のドレス

本作品は、彫刻家として名高いアルベール・バルトロメが画家として活動していた時期の夫人、プロスペリー・ド・フルーリーが実際に着用していたドレスです。オルセー美術館所蔵の絵画《温室の中で》に描かれた夫人の姿と関連付けられ、今回の「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展において、当時の生活文化を伝える貴重な資料として展示されています。

背景と制作意図

アルベール・バルトロメ(1848-1928)は、当初画家としてキャリアをスタートさせ、1879年から1886年までサロンに絵画を出品していました。その後、妻の死をきっかけに彫刻へと転向し、特に記念碑的な彫刻作品で国際的な名声を得ることになります。

本作品は、バルトロメが画家であった1880年に制作されたもので、彼の妻であるプロスペリー・ド・フルーリー(マリー=ルイーズ)が所有していました。プロスペリーは、1880年以降、自宅でサロンを開き、多くの芸術家や作家、美術評論家が集う場を設けていました。彼女自身も夫であるバルトロメのほか、親交のあったエドガー・ドガのモデルも務めています。

このドレスは、バルトロメが1881年頃に制作した絵画《温室の中で》に描かれた夫人プロスペリーが着用しているサマードレスの実物として展示されています。展覧会「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」は、印象派の画家たちが戸外の風景だけでなく、私的な室内空間に向けた関心に焦点を当て、近代都市パリの人々の生活や心理、親密さを表現した作品群を紹介しています。このドレスは、絵画と現実の生活との繋がりを示すものとして、当時の室内における人々の営みやファッションの文脈を具体的に提示する意図を持って展示されています。

技法と素材

「アルベール・バルトロメ夫人のドレス」は、1880年に制作され、素材は綿(コットン)です。デザインは、1880年代初頭の夏の流行を反映したもので、水玉と縞模様があしらわれた細身のロングドレスです。当時のファッションの特徴であるその「あまりの細さ」が印象的であると評されています。

作品の意味と評価

本作品は、単なる衣服としてだけでなく、19世紀後半のパリにおける上流階級の女性のファッション、そして当時の日常生活を垣間見せる歴史的資料として重要な意味を持っています。バルトロメの絵画《温室の中で》と並べて展示されることで、絵画の中の人物がどのような衣装を身につけていたのかを具体的に示し、絵画鑑賞に奥行きを与えます。

また、このドレスは、画家の妻という特定の人物に属するものであり、芸術家の私的な生活空間と密接に結びついています。印象派が追求した「室内」というテーマにおいて、実際に存在した生活様式の一部を提示することで、絵画が描かれた時代の息吹を現代に伝える役割を担っています。その評価は、美術品としての直接的な影響力というよりも、当時のファッション史、社会史、そして美術史を横断する貴重な実物資料として、展覧会のテーマを深く理解するための鍵となる点にあります。