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温室の中で In the Conservatory

アルベール・バルトロメ Albert Bartholomé

アルベール・バルトロメ《温室の中で》作品紹介

アルベール・バルトロメの油彩画《温室の中で》は、1881年頃に制作された作品です。本作品は、オルセー美術館所蔵の印象派コレクションを紹介する展示会「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」において展示されています。

制作の背景・経緯・意図

本作は、フランスの画家・彫刻家であるアルベール・バルトロメ(1848-1928)が、自身の妻であるプロスペリー・ド・フルーリーをモデルとして描いた等身大の肖像画です。1881年にフランス芸術家協会サロンに出品され、バルトロメが画家として活動していた幸福な時期を象徴する作品とされています。バルトロメは1879年から1886年までサロンに絵画を出品していましたが、妻プロスペリーが1887年に若くして亡くなったことで深い悲しみに包まれました。友人のエドガー・ドガの勧めもあり、彼は彫刻の道に進むこととなり、1886年以降は絵画制作を行わなくなりました。

バルトロメ夫妻のサロンには、ジャック=エミール・ブランシュ、メアリー・カサット、ギュスターヴ・ジェフロワ、カール・ユイスマンスなど、多様な芸術家や作家たちが集っていました。本作は、彼らの知的な交流や当時の芸術思潮を反映しているといえます。

技法や素材

本作品は、油彩でカンヴァスに描かれています。サイズは高さ235.0cm、幅145.0cmです。

その様式は、儀礼的な肖像画の伝統に連なる古典主義の要素、ジュール・バスティアン=ルパージュの作風を思わせる写実主義、そしてギュスターヴ・カイユボットの作品に見られるような印象派の革新性を取り入れています。特に、光と影の強いコントラストや、鮮やかな色彩を力強い筆致で施す技法には印象派の特徴が表れています。温室の開かれた扉から日陰の室内へと足を踏み入れる若い女性が正面から描かれ、その入念に整えられたポーズや衣装は、公式な肖像画の伝統を踏襲しています。

意味

《温室の中で》は、画家とその妻の私的な生活の一場面を捉えたものであり、彼らの幸福な家庭生活を物語っています。妻が立つ温室は、屋内と屋外の中間的な空間であり、室内と自然が交差する場面を描くことで、当時のブルジョワ階級の邸宅装飾における温室の人気を反映しています。本作品における植物の豊かさや色彩の鮮やかさ、そして妻への愛情は、鑑賞者から心を揺さぶるものとして評されています。

古典主義、写実主義、印象主義という異なる様式が融合している点は、当時の多様な芸術的潮流と、バルトロメ夫妻が交流した幅広い知的な社交界を反映しています。

評価や影響

本作品は1881年のフランス芸術家協会サロンで発表され、バルトロメの初期の絵画は評論家のジョリス=カール・ユイスマンスや画家エドガー・ドガらから賞賛を受けました。

この絵画は、バルトロメが画家として活動していた短い期間の重要な作品であり、妻の死とドガの励ましによって彫刻家へと転身する前の彼の才能を示しています。

「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展では、「室内に取り込まれた自然」というテーマの章で展示されており、印象派の画家たちが屋外の風景だけでなく、室内の情景や光、そして室内空間における自然の要素にも注目していたという、従来の印象派のイメージを覆す新たな視点を提供しています。特にこの展覧会では、絵画の中に描かれているプロスペリーが着用していたサマードレスの実物が展示されており、来場者は絵画と同じ時間世界にいるかのような体験ができるとされています。