ベルト・モリゾ Berthe Morisot
オルセー美術館所蔵「印象派―室内をめぐる物語」にて展示されるベルト・モリゾの作品「テラスにて」についてご紹介します。
「テラスにて」は、フランスの女性印象派画家ベルト・モリゾが1874年に制作した油彩画です。この年は、第1回印象派展が開催された記念すべき年であり、モリゾ自身もこの展覧会に参加しています。本作は、1877年に開催された第3回印象派展にも出品され、12点のうちの1点として展示されました。
作品の舞台は、ノルマンディー海岸沿いの避暑地フェカンにある、モリゾの父方の親戚であるリュシアン・ブルジエ夫人の別荘のテラスです。モデルはリュシアン・ブルジエ夫人自身であり、男性服を思わせるテーラードカラーがあしらわれた外出用のツーピース状のドレスを着用し、麦わら帽子をかぶった比較的くつろいだ姿で描かれています。モリゾは、女性や子どもの日常生活、家庭内の情景や庭園での憩いの様子を好んで題材とし、都会的で軽快なセンスと明るい色彩、女性的で細やかな情感が特徴的な作品を多く残しました。本作もまた、私的な空間における人物の穏やかな一瞬を捉えようとするモリゾの視点が反映された作品と言えます。
本作は、45.0×54.0センチメートルのカンヴァスに油彩で描かれています。モリゾは印象派の画家として、光と色彩の効果を巧みに用いることで知られています。特に、「テラスにて」では、明るい色彩と素早い筆致によって、光の反射や影の移り変わりが生き生きと表現されていると考えられます。構図においては、テラスから遠景の海を見下ろすという斬新なアングルが採用されており、モダンな感性による大胆な画面構成が特徴的です。遠景にはヨット遊びに興じる人々の姿も確認でき、当時のリゾート地の様子がうかがえます。
「テラスにて」は、当時の印象派画家たちにとって重要なテーマであったリゾート地を背景に、人物の穏やかな日常の一コマを切り取っています。モデルのくつろいだ服装やテラスから望む開放的な風景は、当時のブルジョワ階級の女性が享受した、家庭内の優雅な時間と屋外活動への関心の高まりを示唆していると解釈できます。モリゾは女性の視点を大切にし、その独自の感性を作品に反映させました。この作品は、単なる肖像画に留まらず、女性の視覚や感受性を強調し、当時の社会における女性の経験や感情を鮮やかに映し出している点で意味を持っています。
「テラスにて」は、1877年の第3回印象派展に出品された際、印象派を擁護する批評家たちから高く評価され、賞賛を浴びました。モリゾはクロード・モネ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、エドガー・ドガらと共に印象派の中心的な存在であり、彼女の作品は都会的で軽快なセンスと明るい色彩に満ち、女性的で細やかな情感がにじみ出ていると評されています。
本作品は、現在「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展で展示されており、巡回先である国立西洋美術館にて鑑賞できます。また、2019年にオルセー美術館で開催されたベルト・モリゾ回顧展にも出品されるなど、モリゾの代表作の一つとしてその芸術的価値が再認識されています。