エルネスト・デュエズ Ernest Duez
エルネスト・デュエズの油彩画《ランプを囲んで》は、1882年頃に制作された作品です。この作品は、オルセー美術館所蔵「印象派―室内をめぐる物語」展で展示されています。
エルネスト・デュエズは、1843年にパリで生まれ、イジドール・ピルスに絵画を学びました。彼の画風は、保守的なサロン美術と印象派の中間を行く「ジュスト・ミリュー(中道)」と評されますが、エドゥアール・マネを敬愛し、マネやモネ、ドガ、モリゾといった印象派の画家たちの作品を所有するなど、印象派の動向にも関心を示していました。同時代の画家たちからは印象派の先駆者の一人として認識されていたこともあります。デュエズは、近代的な主題としてのジャンル画、肖像画、風景画を手がけました。
《ランプを囲んで》は、当時の都市生活において公共の場と私的な家庭との境界が明確化し、家庭が安らぎの場となった時代背景を反映しています。先進的な画家たちは、このような家庭内でのくつろいだ情景を描くことに魅力を感じていました。本作は、デュエズ自身の家から着想を得て描かれたとされています。
本作は油彩でカンヴァスに描かれています。デュエズの作品は、多くの印象派画家と比較して、抑制された色彩とより制御された技法が特徴です。 《ランプを囲んで》では、親密な室内の一場面を繊細に捉えることに画家が関心を示していることがうかがえます。 作品の中心にあるランプの光が人物たちを照らし出し、その光の表現が空間に深みを与えています。
この作品は、家庭内の親密な一場面を描いています。画面には、チェスに興じる二人の若い男女と、その様子を見守る年長の女性が描かれています。室内に配されたピンクの紫陽花は「愛」の象徴であり、室内空間の調和において重要な役割を担っています。これにより、若い男女の間に繰り広げられる「愛の駆け引き」が暗示され、年長の女性(母親とされる)がその行方を見守るという、装飾的かつドラマティックな情景が表現されています。 これは、デュエズが自然主義的な手法で、現代の人々を彼らの適切な環境の中で描こうとした姿勢を示しています。
《ランプを囲んで》は、エルネスト・デュエズの代表的な室内画の一つです。展示会では、この作品の「本当に灯りがその場を照らしている!」と感じさせる光の描写が来場者の注目を集め、鑑賞者にまるでその場にいるかのような錯覚を与えるとして評価されています。 デュエズは、サロンで成功を収め、複数のメダルを獲得するなど、同時代において確固たる地位を築いた画家でした。 また、彼は当時のアカデミックな美術教育機関であるエコール・デ・ボザールが提唱する停滞した原則から解放された芸術を推進し、アバンギャルド芸術の発展を強く支持したことでも知られています。 本作は、印象派が戸外の風景だけでなく、近代化するパリにおける親密な室内空間も重要な主題として捉えていたことを示す作品として、現在の展覧会においてもその魅力を伝えています。