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タペストリーを作るコルデー夫人 Madame Cordey Making Tapestry

フレデリック・コルデー Frédéric Cordey

「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展に出品されるフレデリック・コルデーの作品《タペストリーを作るコルデー夫人》は、印象派の画家が描いた室内画として、当時の生活の一端を伝える貴重な作品です。

この作品は1879年に油彩でカンヴァスに描かれました。作者であるフレデリック・コルデー(1854-1911)は、フランスの印象派に属する画家です。彼はパリのエコール・デ・ボザールでイシドール・ピルスやギュスターヴ・ブーランジェに師事しましたが、早くからアカデミックな絵画教育を離れ、印象派の道を歩みました。 特にオーギュスト・ルノワールとは親密な交流があり、ルノワールの代表作《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会》や《会話》などにもコルデーの姿が描かれています。 コルデーはまた、カミーユ・ピサロが活動していたヌヴィル=シュル=オワーズやエラニーの近郊にも滞在していました。 経済的に裕福であったため、彼は画商による宣伝に頼ることなく、自身の趣向に従って制作活動を行うことができました。

作品名が示す通り、この絵には画家の妻がタペストリーを制作する姿が描かれています。19世紀のブルジョワ階級の家庭において、タペストリー制作やピアノ演奏、読書といった室内での活動は女性の領域と見なされており、この作品はそうした当時の女性の日常を捉えたものです。 戸外の風景を描くことで知られる印象派ですが、本展「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」では、近代都市パリで展開された彼らのもう一つの側面に光を当てています。この作品も、印象派が近代生活、特に私的な空間である室内の情景やそこで営まれる人間ドラマに深く関心を寄せていたことを示唆しています。

技法としては、油彩が用いられています。コルデーは印象派の画家として、明るい色彩と並置された筆触を用いることを特徴としていました。 風景画を主に描いたコルデーですが、肖像画においても、細部を緻密に描写するのではなく、色彩の濃淡によって被写体を表現し、色彩を振動させるような独特のタッチで描いています。

コルデーの作品は、彼の生前に展覧会で発表される機会は少なかったものの、1913年から1914年に開催された回顧展では、アドルフ・タバラン、ポール・アレクシス、ギュスターヴ・ジェフロワといった美術評論家から高く評価されました。 個々の作品に対する詳細な評価は多くないものの、オルセー美術館に所蔵され、「印象派の殿堂」とも称される同館のコレクションを代表する本展に出品されることは、作品が印象派における室内画の重要な一例として認められていることを示しています。 この作品は、印象派が光と色彩の探求を室内空間にも広げ、近代社会における人々の生活、特に私的な営みを芸術の主題としたことの一端を伝えるものと言えるでしょう。