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瞑想、長椅子に座るモネ夫人 Meditation. Madame Monet on the Sofa

クロード・モネ Claude Monet

クロード・モネ《瞑想、長椅子に座るモネ夫人》

本作品は、19世紀フランスの印象派を代表する画家クロード・モネが1871年に制作した油彩画《瞑想、長椅子に座るモネ夫人》です。カンヴァスに油彩で描かれたこの作品は、縦48.2cm、横74.5cmの大きさで、現在はパリのオルセー美術館に所蔵されています。

制作背景と意図 この作品は、モネが第一回印象派展を開催する以前の初期に描かれた人物画の一つであり、モネが人物を主題とした作品は初期に集中していることが知られています。 モデルは、モネの最初の妻であるカミーユ・ドンシュー(1847-1879年)です。 この絵は単なる肖像画としてではなく、長椅子に体を預け、手に持った閉じられた本を膝に置き、物思いにふけるカミーユの姿を捉えることで、瞑想的な雰囲気を主題としています。 当時、モネの生活は決して楽ではなかったものの、愛する妻カミーユとの幸福で親密なひとときが作品からうかがえます。 印象派の画家たちが、近代化が進む1870年代のパリにおいて、現代生活の情景や室内での家族や友人たちの様子を絵の題材に選ぶようになった傾向を示す一例でもあります。

技法と素材 本作は油彩/カンヴァスという一般的な画材で制作されています。 特筆すべきは、モネの卓越した光の扱いがすでにこの作品に見て取れることです。窓から差し込む外光が、カミーユが座るソファを明るく照らし出し、鑑賞者の視線をそこへ誘導します。 その光がさらにカミーユの横顔へと視線を誘うよう、巧みな構図が構成されています。 モネは風景画において暗色の使用を控える傾向がありましたが、この作品ではカミーユの濃紺の衣装やカーテンに暗い色を用いることで、白を基調としたソファや窓から入る明るい光との強いコントラストを生み出し、人物へと視線を誘う色彩配置がなされています。 このような光と色彩の対比は、後にモネが追求することになる光の表現の萌芽を示していると言えるでしょう。

作品の意味 本作品は、モネが妻カミーユの私的な時間、すなわち日常生活の中での「気晴らし、夢想、親密さ」を描写したものであり、作品のタイトル通り、カミーユが内省的な状態にあることを示唆しています。 19世紀当時、私的な室内空間は女性の領域と見なされることが多かったため、この作品は、外界から守られた室内における女性のくつろぎや安逸な家庭内の雰囲気、そして静かな感情を表現しています。 印象派の画家たちが、生活空間の中の人々を描くことで、「現代性(モデルニテ)」というテーマを探求したことを示す絵画ジャンルの一つでもあります。

評価と影響 《瞑想、長椅子に座るモネ夫人》は、一般的に戸外の風景画の画家として知られるモネの、数少ない人物画の一つとして貴重です。 第一回印象派展以前の制作であるため、まだ確立された印象派絵画としての際立った特徴は多くありませんが、モネが後の作品で発展させる光の表現の萌芽が既にこの作品に内包されていると評価されています。 また、「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展のような展覧会において、印象派の「戸外の光」だけではない「もうひとつの魅力」として、彼らが室内をテーマにした表現や家庭内の情景にも深く関心を寄せていたことを示す重要な作品として位置づけられています。