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読書 Reading

エティエンヌ・モロー=ネラトン Étienne Moreau-Nélaton

エティエンヌ・モロー=ネラトン《読書》にみる室内画の世界

「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展にて展示されるエティエンヌ・モロー=ネラトン(Étienne Moreau-Nélaton)の作品《読書》(1903年、油彩/カンヴァス)は、印象派の画家たちが探求した室内空間の魅力と、その中に息づく人々の日常を描き出した一点です。

制作の背景と画家の意図

エティエンヌ・モロー=ネラトン(1859-1927)は、パリに生まれ、祖父の代から続く豊かな美術収集の伝統を持つ家庭で育ちました。1882年に画家となることを決意し、家族と親交のあったアンリ=ジョゼフ・アルピニ、アルベール・メニャンに師事しました。1885年にはパリのサロンで初出品を果たしています。彼の画風はエドゥアール・マネやベルト・モリゾの影響を受けており、主に家庭内の情景や肖像、風景画を手がけました。彼はまた、著名な美術収集家、パトロン、美術史家としても知られ、後にルーヴル美術館やオルセー美術館を含むフランスの国立美術館に多くのコレクションを寄贈し、マネの《オランピア》の国家による取得に貢献しました。本作品《読書》が制作された1903年頃の彼は、印象派の技法を取り入れつつ、象徴主義的な要素も作品に組み込むことで、単なる写実を超えた深い感情や心理描写を追求していました。

技法と素材

この作品は、1903年に油彩でカンヴァスに描かれました。モロー=ネラトンの画風は印象派の影響を強く受けており、光と色彩の一瞬を捉えることに重点を置いた、自由な筆致を特徴としています。 マネやモリゾの技法を習得することで、彼は描写の技術を磨き上げました。

作品が持つ意味

《読書》は、家庭内の情景、特に読書に没頭する子供の姿を通して、温もりと静謐な雰囲気で満たされた親密な室内空間を描いています。モロー=ネラトンは、家庭生活の場面を卓越した感受性と細部へのこだわりをもって表現することに長けていました。彼の作品は、日常の活動に従事する家族で満たされた私的な室内を、温かさと穏やかさに満ちた雰囲気で描き出すことで、見る者に深い感情的、心理的な次元を考察させます。 《読書》に描かれた子供の服装からは、当時の上流階級のゆとりのある生活がうかがえ、クッションや絨毯の可愛らしい花柄もまた、室内の装飾に込められたこだわりを示唆しています。この作品は、その色彩の美しさ、筆致、そしてモチーフが鑑賞者の心を引きつけ、非常に静かで深く鑑賞に値する作品として評価されています。

評価と影響

本作品《読書》は、オルセー美術館のコレクションに所蔵されており、今回の「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展では、印象派の画家たちが戸外の光だけでなく、近代化する19世紀後半のパリの室内情景や現代生活をどのように描いたかというテーマの中で紹介されています。 エティエンヌ・モロー=ネラトン自身は、画家としての活動だけでなく、コレクションを通じて印象派と象徴主義の様相を形成する上で重要な役割を果たしました。彼の作品は、印象派が単なる風景画に留まらず、近代市民生活における「室内」というテーマにも深い関心を寄せていたことを示す貴重な例となっています。