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バラ色のドレス The Pink Dress

エドゥアール・イポリット・マルゴテ Édouard Hippolyte Margottet

オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語より:エドゥアール・イポリット・マルゴテ作 《バラ色のドレス》

現在開催中の「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展にて展示されているエドゥアール・イポリット・マルゴテの油彩画《バラ色のドレス》は、1880年から1881年にかけて制作された作品です。本作品は、印象派の画家たちが探求した「室内」というテーマにおける、日常の情景と親密な感情の表現を示しています。

背景と制作意図

エドゥアール・イポリット・マルゴテは、1848年にフランスのサン=カンタンに生まれ、1887年にサン=ジェラン=ル=ピュイで亡くなったフランスの画家です。彼は画家ピルスの弟子であり、1869年のサロンで女性の肖像画を発表し、光の優れた配分で注目を集めました。その後も力強い色彩の肖像画や花、静物画を発表し続けました。

《バラ色のドレス》は、当時の女性の「家での仕事」である裁縫をする女性を描いています。作品全体は暗い背景で構成されていますが、ベビーピンクのドレスを着た女性と、その頬のピンク色が呼応し、暖かな印象を与えます。母親の表情は陰になって見えにくいものの、赤ちゃんに向ける優しい視線が、作品に温かみと親密さをもたらしています。一部の鑑賞者からは、あたかも舞台にスポットライトが当たっているかのような構図であると評され、日常の場面を演劇的に捉えた画家の意図が示唆されています。

技法と素材

この作品は油彩によりカンヴァスに描かれています。寸法は額なしで縦54.2センチメートル、横65センチメートルです。マルゴテの筆致は、モネが《印象、日の出》を描いた1872年頃にすでに印象派的な特徴を備えていたことが指摘されており、この作品においてもその筆遣いが見どころの一つとされています。

作品の意味

「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展は、印象派が単なる戸外の風景画に留まらず、室内空間にも深い関心を寄せていたことを示すものです。本作品は、特に「日常の情景」の章に位置づけられ、家でのくつろぎ、休息、娯楽、そして「手仕事」といった側面を表現しています。ピンク色のドレスと子供の柔らかな肌の色合いが、家族の温かさと私的な空間における幸福感を描き出しています。作品名にある「バラ色」は、当時の文脈において、赤ではなくピンク色を指す言葉として用いられていました。

評価と影響

《バラ色のドレス》は、その可愛らしさや心温まる雰囲気から、展覧会に訪れた多くの鑑賞者の印象に残る作品として挙げられています。また、暗い背景に浮かび上がるピンク色のドレスという独特の構図が、日常を描いた他の作品とは異なる異彩を放っているとの評価も受けています。この作品は、1969年にアーティストの義理の娘であるポール・マルゴテ夫人によってルーヴル美術館に寄贈され、その後オルセー美術館に所蔵されました。本作は、印象派の画家たちが室内のテーマを通じて、人物の個性、社会性、そして私的な生活の微妙なニュアンスをどのように表現しようとしたかを示す一例として、現在も注目されています。