シャルル・デザヴァリ Charles Desavary
本作品《絵を描くコロー》は、フランスの画家シャルル・デザヴァリによって1871年に制作された油彩画です。印象派の殿堂として知られるパリのオルセー美術館に所蔵されており、現在開催中の「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展にて展示されています。
画家シャルル・デザヴァリ(1837-1885)は、フランスのアラスに生まれ、同地で生涯を終えました。彼は風景画、静物画、素描、イラストレーション、版画など多岐にわたる分野で活躍しました。デザヴァリは、バルビゾン派の主要なメンバーであり、後の印象派の画家たちにも大きな影響を与えた19世紀フランスを代表する風景画家ジャン=バティスト=カミーユ・コロー(1796-1875)に師事しました。
この作品は、デザヴァリがその師であるコローが絵を描いている姿を描いた肖像画です。作品が制作された1871年当時、コローはすでに画家として高い評価を得ており、デザヴァリが自身の師であり尊敬する画家を主題に選んだことは、コローへの敬意と、巨匠の創作の瞬間を記録しようとする意図があったと考えられます。また、デザヴァリは写真技術にも強い関心を持ち、コローの素描をまとめた写真集を出版した経緯もあり、師の芸術活動に対する深い探求心と記録への意識が背景にあると言えるでしょう。
《絵を描くコロー》は、1871年に油彩で板に描かれました。その大きさは縦32.0センチメートル、横24.5センチメートルと小ぶりな作品です。板に描かれた油彩画であることから、細部の描写や光の表現において、繊細な筆致が用いられていることがうかがえます。
この作品は、画家が別の画家を描くという、肖像画の中でも特に芸術家の内面や創作過程に焦点を当てたものとして重要な意味を持ちます。コローは、詩情あふれる森や湖の風景画で知られ、また人物画においても名作を残しています。彼の作品における「20にも分けられる」と言われるほど理知的な色価の秩序と構成、そして影さえも色彩を放つ色面の調和は、印象派の画家たちにも大きな影響を与えました。
デザヴァリがコローの絵を描く姿を捉えた本作は、芸術家のアトリエという「創作の空間」を描いた作品として、今回の「オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語」展における「室内の肖像—創作の空間で/モデルを映し出す部屋で」というテーマに合致しています。これは、印象派の画家たちが戸外の風景だけでなく、室内空間やそこで営まれる人間の活動、特に芸術家の制作風景にも関心を寄せていたことを示す一例として評価されます。
作品そのものは、師コローへのオマージュであると同時に、芸術家が創造活動を行う際の姿を記録した貴重な資料でもあります。この絵を通じて、コローという偉大な画家の存在感や、制作に没頭する真摯な姿勢が現代に伝えられています。オルセー美術館に所蔵されていること自体が、その芸術的価値と歴史的重要性を示すものです。