宮脇愛子 / Miyawaki Aiko
水戸芸術館所蔵の宮脇愛子による作品《作品(TL11-0)》は、1962年に制作された油彩作品です。この作品は「開館50周年記念 モダンアートの街・新宿」展にて紹介されます。
この作品は、宮脇愛子が1957年から1966年にかけてヨーロッパやアメリカに滞在し、制作活動を行っていた時期に生み出されました。特にミラノやパリ滞在中に、大理石粉を混ぜた絵具を用いた抽象絵画を制作しており、《作品(TL11-0)》もその系譜に連なるものです。
制作の背景には、絵筆のストロークそのものよりも、絵具をキャンバスに「押し付ける」彫刻的な感覚が重要であるという、宮脇の意図がありました。彼女は、大理石粉を混ぜた絵具を用いることで、画面に微妙な凹凸のパターンを作り出し、鳥の羽を思わせるような表現を試みました。
技法としては、油彩に大理石粉を混ぜた絵具をカンヴァスに用いることで、平面でありながらも起伏のある表面を作り出しています。パレットナイフなどを使って絵具を厚く塗布することで、彫刻的な質感と奥行きが表現されています。
この作品が持つ意味は、表面のわずかな凹凸が光と影の繊細な相互作用を生み出し、鑑賞者の位置や光の当たり方によって見え方が刻々と変化するという点にあります。この絶え間ない変化の様は、日本の伝統的な美意識である「うつろひ」(移ろい)の概念に通じるものとされています。
この「WORK」と題された一連の平面作品は、宮脇愛子のその後の創作活動にも大きな影響を与えました。絵具の立体的な付着による「彫刻的感覚」は、1960年代半ばから後半にかけて彼女が手がけることになる真鍮のパイプを用いた三次元作品へと発展していく素地となりました。宮脇愛子は、後に「うつろひ」シリーズと名付けられた金属彫刻によって国際的に高い評価を受けることになりますが、《作品(TL11-0)》のような初期の平面作品における探求が、その後の動的な彫刻表現への道を切り開いたと言えます。水戸芸術館は1997年にこの作品を収蔵しています。