刑部人 / Osakabe Jin
洋画家、刑部人による作品「我庭冬」は、新宿歴史博物館の収蔵品であり、開館50周年記念「モダンアートの街・新宿」展で紹介されています。制作年は不詳ですが、油彩・カンヴァスで描かれた本作は、刑部人の芸術における特徴をよく示しています。
刑部人(おさかべ じん、1906-1978)は栃木県に生まれ、東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科で和田英作に師事し、後に金山平三からも影響を受けました。彼の芸術活動は帝展への初入選を皮切りに、日展での特選、新世紀美術協会への参加など、多岐にわたります。
刑部人の作風は、生涯を通じて日本の風景を描くことに捧げられた洋画家としての姿勢に特徴があります。初期には精緻な描写を見せたものの、時流に惑わされず写実を追求し、特にペインティングナイフを用いた独自の技法を確立しました。この技法により、生乾きの絵具を重ねることで、刻一刻と変化する自然の表情を躍動感あふれるタッチで表現しました。彼の作品には、ほとばしる水の音さえ聞こえてくるような渓流や、隣に住んでいた林芙美子の夫が育てた薔薇など、身近な自然の情景が好んで描かれました。
本作「我庭冬」の具体的な制作背景は不明ですが、「冬」というタイトルと「我庭」という言葉からは、画家が身近な庭の冬景色を通して、移ろいゆく自然の厳しさや静謐さを捉えようとした意図がうかがえます。油彩・カンヴァスという素材と彼の得意としたペインティングナイフの技法は、冬の空気感や雪、枯れ木の質感などを表現する上で効果的に用いられたと考えられます。
刑部人は風景画の巨匠として地位を確立し、その作品は財界や政界にも多くのファンを持つと評されました。彼の作品が持つ、日本の自然に対する深い洞察と、それを洋画の技法で表現する独自のスタイルは、多くの人々に感銘を与えました。
「我庭冬」が展示される「開館50周年記念 モダンアートの街・新宿」展は、SOMPO美術館が主催し、新宿という地が日本の近代美術の発展において果たした役割に焦点を当てています。明治時代末期から多くの芸術家が新宿に集まり、近代美術の一大拠点となった歴史の中で、刑部人のような画家たちの作品が、新宿の文化的景観を形作った一翼を担っていたことを示しています。