森田曠平
「国立劇場の名品展」にて紹介される森田曠平の作品「老妓」について説明します。
作品概要 「老妓」は、日本画家である森田曠平(もりた こうへい)が1993年に制作した作品です。彩色・紙で描かれ、サイズは90.0 × 64.0 cmとなっています。この作品は、第78回再興院展に出品されました。現在は、日本芸術文化振興会に所蔵されています。
制作背景と意図 森田曠平は1916年に京都で生まれ、幼少期から病弱な体質であったものの、祖母を通じて喜多流の能に親しみ、広く文学に接することで、後の絵画主題の源泉となる素養を培いました。 彼は当初油彩画を学びましたが、1940年からは日本美術院の画家である小林柯白に師事し、日本画の制作を本格的に開始しました。 その後、小林柯白の師であった安田靫彦に師事し、安田の歴史画に感銘を受けたことをきっかけに、古典文学や歴史風俗に取材した格調高い物語絵の世界を描くようになりました。
森田曠平の作品には、きつい眼差しで無表情な女性が多く登場する特徴があり、色彩豊かで静的な表現が能や文楽の知識に影響されていると考えられています。 「老妓」もまた、こうした彼の人物画の特徴を示す一例であり、歴史や伝統芸能を通じて培われた深い洞察に基づき、内面的な感情や存在感を表現しようとした意図が窺えます。
技法と素材 本作は「彩色・紙」と表記されており、日本の伝統的な絵の具を用いて紙に描かれた日本画です。森田曠平は、力強い筆致で歴史画や人物画を描くことに定評がありました。 また、旺盛な探究心を持ち、日本画制作においては豊かな色彩と細やかな線で表現された作品を多く残しています。
作品が持つ意味 「老妓」というタイトルは、「年老いた芸妓」を意味します。森田曠平は、幼い頃から日本の伝統芸能に親しんだ背景があり、彼の作品に登場する女性像は、単なる人物の描写に留まらず、その人物が持つ歴史や背景、あるいは内面に秘めた物語性を深く追求したものです。 本作における「老妓」の姿もまた、単なる写実を超え、芸の道を究めた者の生き様や、時間の経過によって刻まれた深遠な美しさを象徴していると考えられます。彼の独特な静的表現は、能や文楽の影響を受け、人物の内面性を強く表していると評されています。
評価と影響 森田曠平は、昭和から平成にかけて活動した日本画家として高く評価されています。 彼は院展を主な発表の場とし、第30回院展での初入選以降、奨励賞や日本美術院賞(大観賞)、文部大臣賞、内閣総理大臣賞など、数々の賞を受賞しました。 1968年には第53回院展で日本美術院賞(大観賞)を受賞し、日本美術院同人となりました。 また、1956年からは多摩美術大学日本画科の助教授を務めるなど、教育者としても近代美術の発展に貢献しました。
「老妓」は、森田曠平の代表作の一つとして挙げられ、日本芸術文化振興会に所蔵されていること、そして国立劇場の名品展で紹介されることから、その芸術的価値と高い評価がうかがえます。