加山又造
国立劇場の名品展にて紹介される加山又造の作品「紅鶴」は、1964年に制作された日本画です。彩色と紙を素材とし、150.0 × 240.0 cmという大画面に描かれたこの作品は、第28回新制作展に出品されました。
加山又造は、戦後の日本画壇において、伝統的な日本画の枠組みに留まらず、西洋絵画の要素や多様な工芸技法を積極的に取り入れ、新たな表現を追求した画家です。彼の作品は、琳派の装飾性や写実的な描写、そして金銀の箔を駆使した独自の表現が特徴とされています。
「紅鶴」が制作された1964年は、加山が伝統的な日本画の技法を深く探求しつつも、現代的な感覚を取り入れ、自身の画風を確立していった時期にあたります。彼は、金箔や銀箔の持つ静けさや象徴性、永遠性といったニュアンスを重視し、これらを背景としてだけでなく、モチーフ自体を描写するためにも用いることで、箔の可能性を大きく広げました。
具体的な技法としては、四角い箔を並べて貼る「平押し」、細い箔で絵や模様を描く「野毛」、細かな箔を振りかける「砂子」、フレーク状の箔をちりばめる「ちぎり箔」、金粉を膠などで固めて絵の具のように使う「金泥」など、多岐にわたる工芸的な手法が駆使されました。これらの職人的な技法を絵画に取り入れることで、加山は豪華絢爛なイメージだけでなく、神秘的で幻想的な空間を創り出すことを可能にしました。
作品に描かれた鶴は、加山又造が好んで描いた動物モチーフの一つです。鶴は、長寿や吉祥の象徴として古くから日本美術に登場しますが、加山はこれを独自の視点で捉え、様式化された表現の中に生命感と気品を宿らせました。大画面に描かれた紅鶴は、その存在感とともに、見る者に静謐でありながらも力強い印象を与えます。
加山又造は、京都の伝統的な職人の家に生まれた自身の工芸的な資質を昇華させ、また琳派など日本の古典美術からの影響を受けつつ、前衛的な表現を追求しました。彼の作品は、戦後衰退の危機にあった日本画に新しい息吹を吹き込み、現代日本画の可能性を大きく広げたものとして高く評価されています。