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花と犬

中村岳陵

国立劇場の名品展にて展示される中村岳陵の作品「花と犬」は、1954年に制作された日本画です。彩色・紙を素材とし、131.5 × 107.2 cmの寸法で、同年の第10回記念日展に出品されました。

中村岳陵は、明治から昭和期にかけて活躍した日本画家であり、伝統的な日本画の技法に加えて、近代西洋絵画の表現を積極的に取り入れた独自の画風を確立しました。彼の画業は多岐にわたり、仏画、歴史画、風俗画、花鳥画、風景画などを手掛けています。

「花と犬」が制作された1954年当時、中村岳陵は1950年に日本美術院を脱退し、日展へと発表の場を移していました。この時期の作品には、伝統的な大和絵や琳派の描法と、後期印象派のような明るく華やかな色彩感覚が融合された、モダンで清新な特徴が見られます。

本作「花と犬」は、そのタイトルから、自然の生命力と動物の姿を描いた花鳥画または動物画に分類されます。中村岳陵は、繊細な描線と幻想的な色彩を用いて、風景や女性像を描き上げたことで知られており、この作品においても、そうした彼の特色が花と犬という主題を通して表現されていると考えられます。

具体的な制作意図や、この作品単独での詳細な意味付けに関する記述は多くありませんが、中村岳陵の作品全体に共通する、伝統と革新を融合させたモダンな日本画表現を追求する姿勢が背景にあると言えます。彼は生涯にわたり意欲的な制作活動を続け、現代日本画壇の重鎮として高い評価を受けています。

「花と犬」が第10回記念日展という節目となる展覧会に出品されたことは、当時の日本画壇における中村岳陵の重要な位置づけを示しています。この作品は、日本画の伝統的な美意識と、新しい時代の感覚を取り入れようとした彼の芸術的探求の一端を示すものとして、その価値が評価されてきました。