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流れる星〈黒〉

土橋醇

土橋醇が1965年に制作した油彩作品、「流れる星〈黒〉」についてご紹介します。この作品は、163.0 × 130.0 cmのサイズで、油彩と鉄板、キャンバスを用いて描かれています。

土橋醇は、1910年に東京で生まれ、1938年に東京美術学校油画科を卒業しました。卒業後、フランスへ渡りアカデミー・ランソンで学んでいます。その後、1953年から1973年までの20年間を再びパリで過ごし、制作活動を続けました。この期間中、彼は主にサロン・ドートンヌやサロン・ド・メ展に作品を発表し、毎年パリやニューヨークなどで個展を開催しました。1950年代には藤田嗣治らとの交流を持ち、アンフォルメル運動などの影響を受けながら、自身の画風を確立していきました。1973年に帰国しています。

「流れる星〈黒〉」は、土橋醇の主要作品の一つであり、1965年(昭和40年)に制作されました。彼はこの他に「流れる星(白)」という対となる作品も手がけています。本作は油彩絵具に加え、鉄板とキャンバスを組み合わせた独特の技法と素材が用いられている点が特徴です。当時の土橋は、「実景をもとにした抒情的抽象」とも称される画風を展開しており、具象的なモチーフを抽象的な表現へと昇華させていました。

この作品のタイトルである「流れる星」と、色彩としての「黒」の組み合わせは、画家が探求した宇宙的なテーマや時間の流れ、あるいは生命の移ろいを暗示していると考えられます。深遠な「黒」は無限や静寂を、そこに「流れる星」というモチーフが加わることで、一瞬の輝きや消えゆくものへの感覚的な表現が試みられていると解釈できます。

土橋醇は、パリを拠点にドイツなどでも個展を開催し、高い評価を得ました。彼の作品は、戦後の前衛美術を牽引した作品の一つとして位置づけられています。東京国立近代美術館やパリ国立近代美術館をはじめ、欧米のいくつかの美術館にもその作品が収蔵されており、国際的な評価の高さを示しています。