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杉山寧

「国立劇場の名品展」にて展示される杉山寧の作品「瀑」についてご紹介します。

作品名:瀑

アーティスト名:杉山寧

制作年:1955年

素材・技法:彩色・紙

サイズ:186.0 × 170.0 cm

出展:第11回日展

杉山寧(すぎやま やすし)は1909年に東京に生まれ、1993年に84歳で逝去した日本画家です。戦後の日本画壇を代表する「日展三山」の一人として、東山魁夷、髙山辰雄とともにその名を連ねています。東京美術学校(現・東京芸術大学)で松岡映丘に師事し、在学中から帝展で特選を受賞するなど、その才能を早くから認められました。

作品「瀑」は、杉山寧が46歳であった1955年に制作され、第11回日展に出品されました。この時期は、彼が1951年の日展復帰後、作風を一新し意欲的に作品を発表していた転換点にあたります。杉山は、伝統的な日本画につきまとう情緒性や文学性を極力排除し、色や形だけで成り立つ純粋絵画を目指していました。時には、画面に幾何学的な形の配置を定めてから、その形に見合うモチーフを探すこともあったとされています。

「瀑」は「彩色・紙」の作品ですが、杉山寧は1950年代後半以降、伝統的な和紙や絹本に代わり麻布(キャンバス)を支持体として用いるようになります。また、岩絵の具に砂や接着剤を混ぜ、油彩画のような厚塗りの凹凸を持つマチエール(絵肌)を追求するなど、素材や技法において革新的な探求を重ねました。 この「瀑」が制作された1955年は、彼のこうした新しい表現への試みが本格化する直前、あるいはその萌芽が見られた時期と推測されます。彼の作品は、圧倒的な描写力と緊密な構成力を特徴としています。

「瀑」という具象的なモチーフを描きながらも、杉山寧の作品には単なる風景描写に留まらない、より普遍的な意味が込められています。彼は「永遠なるもの」や「乾いたもの」への希求を自身の芸術観の核としており、自然の力強さや本質を、彼独自の知的で洗練された視点から表現しようとした意図が読み取れます。

杉山寧はその類まれな描写力と大胆かつ知的な画面構成によって、それまでの日本画では描かれることのなかった斬新なモチーフに挑戦し、日本画壇に新しい風を吹き込みました。 彼の革新的な画風は高く評価され、1974年には文化功労者、文化勲章を受章するなど数々の栄誉に輝きました。 杉山寧の作品は、伝統的な日本画の可能性を広げ、後世の画家に大きな影響を与え続けています。