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山田申吾

国立劇場の名品展にて紹介される山田申吾の作品「雲」は、1955年に制作された彩色・紙本による日本画であり、同年の第8回新日展に出品されたものです。縦127.0cm、横183.0cmの堂々たるスケールで、その存在感を放ちます。

この作品を手がけた日本画家・山田申吾は、1908年(明治41年)に著名な日本画家である山田敬中の次男として東京に生まれました。彼は東京美術学校日本画科で学び、1931年(昭和6年)に卒業後、同校の研究科に進んで結城素明に師事しました。同期には東山魁夷、橋本明治、加藤栄三といった錚々たる画家たちがおり、彼らは「花の六年組」と称されました。山田申吾は在学中の1930年(昭和5年)には第11回帝展に「水辺初夏」を出品し、初入選を果たすなど、早くからその才能を認められていました。戦後は日展を主な発表の場とし、日展特選(1953年)や日本芸術院賞(1963年)を受賞するなど、日本画壇において要職を歴任し、重鎮としての地位を確立しました。1977年(昭和52年)に68歳で逝去しました。

作品「雲」が制作された1955年(昭和30年)は、山田申吾が画壇で確固たる地位を築きつつあった時期にあたります。第8回新日展に出品されたこの作品は、当時の日本画における伝統的な様式を継承しつつ、現代的な感覚を取り入れようとする山田の制作姿勢を示すものと考えられます。具体的な制作背景や意図については詳細な記録が少ないものの、自然を深く見つめ、その本質を捉えようとする日本画の精神が根底にあることは想像に難くありません。特に「雲」というモチーフは、移ろいゆくもの、あるいは悠久の存在として、古くから日本美術において詩情豊かに描かれてきました。山田申吾もまた、この普遍的なテーマを通して、空間の広がりや光と影の表情、そして自然の雄大さや神秘性を表現しようと試みたのではないでしょうか。

使用されている技法は「彩色・紙」とされており、これは伝統的な日本画の画材と技法に則ったものです。岩絵具や水干絵具といった顔料を膠で溶き、和紙に定着させることで、日本画特有の奥行きと温かみのある色彩表現を生み出しています。緻密な描写と大胆な構図が織りなすことで、画面に生命感と詩的な情感が宿されていると推測されます。

作品「雲」が国立劇場の名品展で紹介されることは、この作品が日本の文化財として、また美術作品として高い評価を受けていることを示唆しています。山田申吾の作品が国立劇場のコレクションに収蔵されている、あるいは重要な展覧会で展示されるということは、彼の作品が日本文化や芸術の象徴として認識されている証と言えるでしょう。この作品は、日本画の伝統と革新を追求した山田申吾の芸術活動の一端を示す重要な作品であり、後世の画家たちや美術愛好家たちに多大な影響を与え続けています。